※ 前編はこちら: 社会不適応者の僕らが、学者になるまで
フィールドワークが好きからコンセプトを紡ぎ出す
楠木:その後、早稲田大学に戻って博士課程へ進まれたのですよね?
三宅:神戸で2浪している間、「食いつなぐための仕事をしたら」と、高校の恩師が経営していたシンクタンクでリサーチをやらせてもらいました。あるとき学生街としての早稲田の調査を任されて、かつて授業を受けていた鵜飼信一先生を訪ねたのです。「三宅、しばらく見ないうちにやつれたな」と驚かれましてね。事情を話したら鵜飼ゼミに入れていただくことになった。鵜飼先生は中小企業論の研究者ですから、ひたすら町工場を回りました。さらに鵜飼先生は、三菱総研のときの同僚だからと藤本先生を紹介してくださって、週1回は本郷の藤本ゼミに隅っこで聴かせていただくようにもなりました。
楠木:じゃあ、藤本スタイルの調査もお好きですか? すごい勢いでフィールドワークをして、勢いだけじゃなく調査ノートもきっちりとって、ありとあらゆることを知っているというスタイル。
三宅:好き嫌いを超えてすごく尊敬しますけど、超人すぎるじゃないですか(笑)。僕はそんなに広い範囲ではできません。2人の先生は似ているところはすごく似ていて、違うところはずいぶん違う。
藤本先生は世界を追いかけますが、鵜飼先生は東京近郊と関東近県各地が中心です。藤本先生は物理学でいうとニュートンの一般理論みたいなことを志していて、全部を説明できる究極の理論を打ち立てる覚悟がおありでしょう。一方の鵜飼先生は、町工場を歩いては人類学者的に深い文脈まで見て、20年間、年に1回はその工場のおじいちゃんと話し続け、お孫さんの教育相談にまで乗るというやり方です。
藤本先生と鵜飼先生を見ていたので、よく言えばハイブリッドを目指したいですし、悪く言うとつまみ食いでやっていくのかなと思っています。
楠木:どちらも労をいとわないやり方ですね。
三宅:ええ、そうです。僕は本来ものぐさですけれど、労をいとわない2人の先生にご恩を受けたので、つらいなと思いながらもそこはサボっちゃダメだなと(笑)。
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