説明して相手に喜ばれるのが好き
楠木:今は東海大学の専任講師になられて。
三宅:はい、おかげさまで、今は風呂付きの部屋に住んでいます(笑)。
楠木:講義はお好きですか? いかにもお好きそうですが。
三宅:好きですね。実はこの本の大元は、かつて個人ブログに載せていた非常勤先の女子大の講義録です。安定しない専業非常勤で、論文は訳がわからないと言われ続け、「授業さえおもしろければ、どこか拾ってくれる」という危機感があったのでしょうね。これが世間に受けなかったら神戸に帰って、塾講師をやるつもりでいました。
楠木:それが巡り巡って本になったのですら、好きなことをやるというのはいいですね。
三宅:お恥ずかしいです(笑)。僕は相手が喜ぶのが好きなのです。まじめだけどあんまり経営学に慣れていない学生に、「こういう考え方をしたらわかりやすいでしょ?」と教えて、わかってもらうとうれしいところがあります。経営学の基礎的な話を面白おかしく話すことは、人よりちょっとできるかなという気はしますね。
楠木:僕も昔から講義が好きでした。お客様である学生がすぐ目の前にいて、反応が直接帰ってくるのがイイですね。今の僕にとっては、講義も本や論文を書くのも全部同じ。全部がお客様に対しての「僕なりの考えごとのご提供」で、場が違うだけ。もともと音楽の仕事がしたかったので、論文や本を書くのはレコーディング、授業や企業の人に話したりするのはライブで、大箱の講演も中箱や小さなライブハウスでの議論もある。音楽活動のメタファーで考えると、仕事で何をやっているのか、自分でもわかりやすい。本や論文をひととおり書いた後で推敲して練り上げていく作業を「ミックスダウン」と呼んでいるのですが、僕はこれが三度の飯よりも大好き。
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