砂上の「丸の内神話」−−オフィスバブル徹底検証

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坪8万円の成約賃料--5月上旬、三菱地所の飯塚延幸副社長は決算説明会の席上で、景気のいい話を披露した。現在、丸の内で建設中の「丸の内パークビル」において、1坪当たり月額賃料8万円で成約したケースがあったと説明。グラフのように、ここに来て調整局面に入ったかに見えた丸の内周辺だが、一等地の新築ビルは、なお強含みで推移していることを印象づけた。

 高額な賃料水準は、丸の内を中心とする狭いエリアに限られる。新築ビルが多いことを差し引いても、中央区日本橋、港区虎ノ門など、他のオフィス街の倍以上という賃料水準は明らかに突出していると言っていい。個別のビルを見ても、丸の内の突出ぶりはわかる。森ビルの六本木ヒルズ森タワーは「共益費などを含んで坪3万円台で借りられた」(今年入居した外資系企業)。丸ビル、新丸ビルなど丸の内の代表的なビルの募集賃料のおよそ半分だ。

突出した賃料水準は、交通利便性の高さ、国際的なブランド力に裏付けられた妥当な価格とも信じられており、多くの関係者は「今年以降しばらくビルの供給が少なくなることを考えれば、遠からず坪10万円で成約するケースが出てくるだろう」と自信たっぷりに語る。地価が調整局面を迎えても、丸の内だけは特別という、いわば「丸の内神話」が流布しているのだ。

今年3月、丸の内に近い内幸町の新生銀行本店ビル、大手町のりそなマルハビル(持ち分)売却では、それぞれ1180億円、1620億円の高値がつき、「都心一等地はまだまだ上がる」との声も聞かれる。

拡散したメガバンクが本部機能整理の動き

が、神話に確固たる根拠があるわけではない。景況感の悪化も響いているのか、丸の内・大手町地区のテナントの中には、高額の賃料にたまりかねて脱出する動きも顕在化している。
 
 人材派遣大手のパソナは、大手町野村ビルで9フロアを借りる同ビル最大のテナントだ。同社の持ち株会社は新丸ビルでも1フロア借りており、大手町・丸の内地区における代表的なテナント。「事業柄、派遣スタッフに本社オフィスに来てもらうことが多くアクセスのよさは重要」(パソナ)と考え、都心一等地に本社を置いた経緯がある。

ところが、大手町野村ビルからは転出することを決めた。同ビルに入居したのは4年前。2008年7月末に訪れる契約更新において大幅な値上げを要求されたため、契約を1年のみ延長し、09年7月までにほかのビルへ移る。現在、新しい本社ビルを物色中だ。

同じ人材派遣のフジスタッフでも、拠点の移動を決めている。同社は、現在、パシフィックセンチュリープレイス丸の内の19階に持ち株会社、27階に事業会社の本社が入居している。このうち、オーナーがダヴィンチ・アドバイザーズに切り替わった後に契約更改を迎えた27階部分は、現行の2倍弱への賃料改定を迫られた。そのため、8月には引っ越しをする予定だ。引っ越し予定のビルは、それほど離れていない近隣の日本橋地区で7月に竣工予定のビル。1坪当たり賃料は従来の水準を維持できるという。「人材派遣会社にとって、人件費の次に大きいのが地代。2倍の値上げになるとさすがに耐えられない」と同社幹部は言う。

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