「ハフポスト」はメディア勢力図を変えるか ハフィントンポスト日本版がスタート。いったい何者なのか。

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それ以外にも、読者の関心に合わせて機械的にオンライン上の記事を集めてくる「グノシー」、ニュース専門家が掘り下げるオールアバウトの「ニュース・ディグ」など、オンライン上のニュース記事や著名人のコメントを加工して読者に見せるサイトは大きなトレンドになっている。オリジナルの記事を掲載しているニュースメディアよりもまとめサイトのほうがページビューを稼ぐ、主客転倒も常態化している。

その発信源はウェブメディアの先進国である米国だ。ハフィントンポストは、8年前の開始当初は民主党寄りのニュースまとめサイトにすぎなかったが、オリジナル記事を増やす中で訪問者数が伸び、11年にはニューヨーク・タイムズなど引用元の既存メディアを凌駕するページビュー数をたたき出すようになった。

「まとめ」は熱い市場に

ハフィントンポストだけではない。ハフィントンポストの共同創業者が立ち上げたバズフィードも存在感を増しているし、ニューズウィークを買収したデイリービーストもまとめ系の勝ち組だ。ヤフーは17歳の少年が開発した記事を自動要約するサムリーを3月に買収。4月には、さっそくこの要約技術を実装したスマホアプリの配布を開始した。記事を要約したり、まとめたりすることは、それだけ熱い市場なのだ。

ただ、アリアナ・ハフィントン編集長は、バズフィードなどの類似サイトを「ページビューが少ないし記事のテイストも違う。競合とはいえない」と切り捨てる。実際、ハフィントンポストは他のサイトにはない独自性を持っている。それは多くのブロガーに対し、無償で記事を提供するよう説得したことだ。さらに一般読者からのコメントを受け付け、SNSとのリンクを強化することで、新しい価値を持ったメディアに育っていった。

「ジャーナリストとして事実を追求していくことが私たちの仕事」とハフィントン氏は言う。その姿勢が既存メディアのジャーナリストを引き付け、今では大手新聞社出身者を中心に約500人の記者、編集者が集まる。社外には約3万人のブロガーもいる。1日に1600本以上の記事を配信し、ニューヨーク、ロサンゼルスなどで地方版を提供。11年にAOL傘下になってからは急ピッチで海外展開中だ。

日本版の松浦茂樹編集長は「日本でも基本はそれほど変わらない。政治の話が中心にはなるが、本国と同様、エンタメも重視していく。今のところ取材記者は1人だが、これから増やしていきたい」と語る。執筆陣には、ライブドア元社長の堀江貴文氏など著名ブロガーを呼び込んだ。引用やリンクでトラブルが起こらないように、事前に有力なニュースメディアに対してはあいさつして回ったという。

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