「ハフポスト」はメディア勢力図を変えるか ハフィントンポスト日本版がスタート。いったい何者なのか。

拡大
縮小

既存メディアと共存を図る姿勢もハフィントンポストの特徴だ。同社はグローバル展開に当たり既存メディアとの提携による信用補完を行っている。フランス版はルモンド、スペイン版はエルパイス、イタリア版はグルップ・エスプレッソという具合に各国の有力新聞社との合弁会社を作り運営を始めている。日本で選ばれたパートナーが朝日新聞社だった。

朝日新聞社の思い切り

注目すべきは、朝日新聞社の思い切りのよさだ。合弁会社のザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン社長を兼務する西村陽一デジタル事業本部長は「絶対に朝日新聞からは中身に口出しをしない。それをやったら終わり。こちらがやるのは信用補完だけだ」と言い切る。「リンクを張ることにより朝日新聞デジタルのページビューが増えていくことも期待しているが、抜くくらいのページビューを稼いでもらいたい」(西村本部長)。目先のことだけを見れば朝日新聞社のブログサイト「ウェブロンザ」と競合するが、多少のバッティングには目をつむる、というスタンスを明確にしている。主導権は完全にハフィントンポスト側に渡している格好だ。

朝日新聞社でデジタル事業を率いてきた大西弘美取締役はこの夏から1年間、MITメディアラボで研究生活を送る。これは前例のない人事だ。それだけでなく同社内にも6月に「メディアラボ」を立ち上げ、未来のメディアのあり方を研究する。朝日新聞社は本気でネット時代に順応しようとしているようだ。

(撮影:尾形 文繁)

山田 俊浩 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT