築地は「食のプロ」が生み出した伝統文化だ 日々の真剣勝負が巨大な市場を支えている
また、仕入れるといっても、ただ数をそろえるだけでは仕事にならない。せり人の仕事は“いかに高い値を付けて売り切るか”ということ。
産地は築地市場だけでなく全国の市場の状況を見て、より高く売ってくれる市場に商品を入れる。そのため、せり人が実績をあげ、産地の信頼を勝ち取った市場に水産物が集まってくるというのだ。
実績をあげるためには、景気の動向や消費傾向もつかまないといけないと柏葉さんは話す。
「例えば台風が午前中で過ぎ去ってくれれば、都心では買い物や飲食店に行く人も増えるから魚は買われます。逆に夕方に台風が直撃すれば出歩く人はまずいない。そうなると仕入れても買い取ってもらえないんです」。
せりの場だけではなく、産地や消費の現場との駆け引きなど、せり人の仕事は世の中の動向を読み解く力の上に成り立ち、水産物を流通させる弁をもつ心臓のような役割を担っているのだ。
「仲卸」の確かな目利きが“築地”の強みとなる
築地場内には、マグロなどの大物鮮魚専門の店や、活魚がメインの店など、専門性の高い仲卸の店が所狭しと並んでいる。そのうちの二つの仲卸業者に、話を伺った。
まず訪れたのは、創業当時から生マグロにこだわる西誠(にしせい)。三代目代表の小川文博さんに、マグロを扱う際の知識と技について伺った。
「せりの前には、『下ヅケ』と呼ばれる事前チェックをおこないます。尻尾の断面で脂の状態を確認し、味を想像しながら下ヅケするんです。生マグロは時期を外すと見た目は一緒でも美味しくないこともありますし、いろんな知識をもとに値付けをしますが実際に切ってみたら予想と違った、ということもありますね」と小川さん。
大きなマグロは、解体も一筋縄ではいかない。解体用の包丁は何種もあり、大きいものでは150cmほど。さらに片刃になっていて、まっすぐ切るのも難しいが、プロの手と技によって丁寧に小分けにされ、店頭に並んでいく。
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