築地は「食のプロ」が生み出した伝統文化だ 日々の真剣勝負が巨大な市場を支えている

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仲卸業者の手に渡った商品は小分けにされて市場内の店頭に並べられ、品物を仕入れにきた小売店や飲食店などの「買出人」へと販売される。

産地から築地市場に届いた水産物は、こうしたさまざまな魚のプロたちを通じて消費者の元へと届けられるのだが、そこに至るまでには、プロそれぞれにさまざまな勝負があるという。

我々は築地市場を舞台に日々闘う魚のプロたちに話を伺った。

水産物流通の心臓部を担う「大卸」

午前10時。普段なら市場が一日を終えようとする時刻だが、取材に訪れたこの日は台風が日本に上陸していたこともあり、せわしない空気が市場内に漂っていた。

「産地に今日の漁獲状況を確認し、明日の入荷情報を仲卸や売買参加者に伝えているんですよ」と教えてくれたのは、築地市場に所属する大卸7社のうちの一つ、中央魚類株式会社のせり人、柏葉勝巳さん。

聞くと、せり人の仕事とは、市場に入ってきた水産物をせりにかけるだけでなく、産地と密にやり取りをし折衝することで、仕入れる魚種やその量のバランスをとるという役目も担っているのだという。

「台風は海が荒れるだけでなく、交通をマヒさせ、物流がストップしたり、産地で水揚げをさばく人たちが出勤できなかったりするでしょ。そうすると台風が去っても荷物が届かないんです。気候以外にも地域によっては風習で漁を行わない期間があり、仕入れがストップすることもあります。海のことだけでなく陸の交通状況や、人員体制、地域の文化など丸ごと産地のことを分かっていないと仕入れはできません」。

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