ホワイトハッカーが創る「イケてる政府」の姿 カリフォルニア州「現役副知事」が語る
ジェニファー・パルカは政府とテクノロジーとのギャップを埋める方法はないかと、長いあいだ考えてきた。パルカは「Web 2.0」の提唱者であるティム・オライリーと、どうすればより多くのIT技術者を政府に関与させられるか、絶えず議論を重ねていた。
技術者を市政に引きいれることが必要なのは明白だったが、大きく稼げる可能性を秘めた民間セクターから彼らを誘いだす方法がわからなかった。それは解けないパズルのようなものだった。アリゾナ州であの運命の1日を迎えるまでは。
「私は家族とバカンスを過ごしていました」と、パルカは私に語った。「そこにある男性が訪ねてきたのです。彼はティーチ・フォー・アメリカ(一流大学の卒業生を、教育環境に恵まれない地域の学校に講師として派遣するプログラム)を終えたところで、その経験について語っていました」
官僚統治を変える「コード・フォー・アメリカ」の成果
「それを聞きながら、不意に『こんなふうに仕向ければいいのよ』とひらめきました。おカネのためではなく、愛のため。祖国に尽くしていると感じられるなら、人は何かをするのです。私はその場でコード・フォー・アメリカのことを思いつきました」
パルカは仕事を辞め、IT技術者を市政府の短期プロジェクトのために派遣する非営利組織「コード・フォー・アメリカ」を設立した。彼らはまず、政府が抱える諸問題の中で、インターネットを基盤とする解決策が必要なものを見つけだす。
そしてウェブ開発者やデザイナーのチームを各都市に派遣し、問題の解決に当たらせる。「いわばティーチ・フォー・アメリカと平和部隊とYコンビネーターのマッシュアップです」と、パルカは言う。
政府の問題解決に着手するには、まさにこの種のイノベーションとリーダーシップが必要だ。パルカが予想したとおり、人々はより良い政府を作るために喜んで6カ月間を割いた。コード・フォー・アメリカのチームが創作した有益なツールはあらゆる種類に及ぶ。
たとえば雪に埋もれた消火栓を地図上に表すボストンのウェブサイトだ。住民は行政に代わってそれらの消火栓を「管理」し、冬の間じゅう使用可能な状態を保つことができた。
GPSを使ってスクールバスの位置を追うプログラムは、親たちがバスの遅れを把握するのに役立った。こうしたプロジェクトは、コード・フォー・アメリカのチームなしには実行されなかっただろう。
米国が建国して間もないころには、官僚統治は好ましいものだった。イノベーションとテクノロジーの専門家であるドン・タプスコットは言う。「90年前、官僚統治は流行語でした。それが汚職や情実人事や腐敗を防ぐ一助になったのです」。しかし、すべてが覆った。政府は、新しいテクノロジーのせいで、時代遅れになった。ならば今度は、そのテクノロジーを取り入れて、市民との溝を埋めるべきだ。
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