米国クラウドファンディング“元祖”の発想力 米国流スタートアップと似て異なる、熱い思想

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最近では、5年前に終了したカルト人気テレビ番組『ヴェロニカ・マーズ』の映画化のために、9万1000人以上から570万ドル以上が集まった。

大金を集めるより、大事なこと

だが、チェンは、多くの資金が集まったからと言って、それが理想だとは思っていない。たとえば、キックスターターのサイトが量販店の販売サイトのように使われることに対しては、本意とするところではないと明らかにしている。

どんなに小さなプロジェクトでも、アーティストとそれをサポートする人々が、やりとりしながらプロジェクトを育てていくようなことが、彼にとっての理想なのだ。

クラウドファンディングは、まさにキックスターターによって形作られたようなものだが、チェン自身は「クラウドファンディング」と呼ばれるのを好んでいない。その定義もあいまいだし、そう呼ばれることによって誤解も生まれるからだ。

キックスターターは、それよりも「(芸術的な活動に経済的・精神的な援助をする)パトロネージと、商業の中間のようなもの」と言う。

けれども、キックスターターの存在によって、これまでカネの流れを牛耳っていた銀行や投資業界、あるいは音楽、映画、プロダクト製造など種々の業界のやり方だけが、世に新しいものを生む方法ではないことが証明された。

資本主義の行きすぎたあり方にうんざりしていたわれわれすべてにとって、これは朗報と言っていいだろう。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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