バーは大人の学校である

新人が、癒しと学びの場を使いこなすための3つの心得

番外編―カウンターの中から“いま”を見ると

バーを11年やっていることの特典に、社会のいろいろな変化が定点観測できる面白さがあります。

一例を挙げると、Hollyをオープンさせた2002年頃は、まだ女性のひとり飲みは一般的ではありませんでしたが、「男性と同じように仕事をしていれば、女性だってひとりで飲みたいときがあるはず」。開店当時のコンセプトは、女性がひとりでも飲みに行けるバー、でした。

それが今では、バーどころか、ラーメン屋、焼き肉にさえ、女性たちはどんどんひとりで行ってしまいます。とてもいいことだと思います。

そんな視点で世の中を見たときに、最近、目立っているように感じるのが、「育メン」の推奨です。

ときどき、常連さんに誘われて、育児中の30代ビジネスマンのお客さまがいらっしゃいます。育児をシェアする日々の息抜きに、ということなのでしょう。

疲れている方が多いです。仕事は激務だけれど、子供の面倒もみなきゃカミさんに悪いから、あるいははっきりと「文句を言われるから」と、減らしてはもらえない仕事量にへとへとになりながら、保育園に迎えにいったり、お風呂に入れたり。中には、そのせいで、夫婦仲が険悪になっているケースも。

家事と育児の分担で、肝心の夫婦仲に亀裂が入る、これでは本末転倒と思います。

ほかの連載にもありますが、女性が子供を産んだあと仕事を続け、キャリアアップもとなると、両親のみならず夫の協力が不可欠。夫の側は、職場にどんなチャンスが待ち構えているときも、子育て、具体的に言うと、保育園の送迎、おむつ替え、食事や風呂の世話などを分担しないと、不平を言われる。

これでいいのかな、と思います。育児というと幅が広いので、乳幼児の身の回りの世話、と、あえて限定しての意見です。

育児を外注するという考え方

資源の少ない日本では、ひとりひとりの労働の積み重ねによってしか、現在の豊かさを維持できません。

それなのに、30代、企業の中堅であり、実力がいちばん発揮できる時期を、おむつ替えに費やしていいのでしょうか。むろん、これは女性の場合にも言えることです。

はっきり言って、乳幼児の身の回りの世話は、親でなくても誰でもできます。ただ、発達を見守り、その子に必要なものを与えるための手だてを講じるというように、個別に目をかけるべきところだけは夫婦の共同作業として、きっちりやる。

あとは、外注すればいいのです。というよりは、外注が広く利用可能になるような制度を、社会全体でしっかりとつくることでしょうか。

私自身、いま30歳の長女を4ヶ月から保育園に預けて働いてきました。1980年台初頭は、まだ「3歳児神話ー子供は3歳になるまで母親の手で育てるもの」が生きていて、それはいろいろなことを言われました。

コピーライターという不規則な仕事で、しかも親も夫も頼れなかったので、ほんとうにいろいろな人に助けてもらいました。短期の住み込みの家政婦さん、育児ボランティアのグループなど。

そして、これは働くママたちのいちばんの難問だと思うのですが、子供の学力、具体的には進学問題もあります。私の場合、この点については、高校入試を勝負所と決め、それまでは放ったらかしでした。バブルがはじけ、急速に仕事環境が厳しくなっていったので、それどころではなかったのです。

そこそこ進学実績がいい高校に入れば、あとは本人が何とかするだろうと思ってのことでしたが、それまで放ったらかしだったので、中3の2学期までの成績はひどいものでした。なので、12月から入試の直前までは、親の私も参考書片手に、自分がもう一度受験するかのような勢いで受験勉強に付き合いました。

その後、娘は都内の私大に進学し、いまはある金融機関で正社員として働いています。

「育メン」の単語を目にするたびに、かつての「3歳児神話」と同じだなと思います。

バーのマスターとしての私の願いは、ドアを開けて入ってきてくださる方すべてが、自らが望む以外の理由で、何かをあきらめることのない人生を歩んでくださること。その休息の場として、これからもバーという「癒しと学びの場」を続けていくことができれば、これ以上の喜びはありません。

筆者より:
昨年11月より、お酒とバーについてお話しさせていただいた「大人飲み」のススメ、連載は今回で終了です。いままでお読みいただいたことに感謝 すると共に、今後も、若い人たちが、癒しと成長の場としてお酒の世界を楽しむことができるよう、情報発信をしていきたいと思います。
興味をもってくださる方は、ブログ http://ameblo.jp/bar-holly-shimokita/
ツイッター http://www.twitter.com/otonanomi201211
を、お読みいただければうれしいです。

イラスト:青野 達人

 

 

 

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