メニューも含め、バーの店内には、それまで、店主と常連客で培ってきた、その店ならではの雰囲気ができあがっています。
なので、慣れないうちは、その雰囲気の出所、酒の品ぞろえかもしれないし、その品ぞろえが気に入って通っている常連さんたちの客層なのかもしれませんが、それを探っていったほうがいいのです。
長く続いているバーほど、目に見えない価値、ブランドともいうべきそれぞれの特長を守ってきています。
たとえば、エルメスの店舗に入っていって、目についたバッグを指さして、「あ、これ、ケリーバッグていうんでしょう? 知ってますよ。俺の彼女、これ持ってるんですよ」と大声で言いますか? そんな恥ずかしいことは、誰だってしないでしょう。それと同じです。
若いうちは、「知らないので、教えてください」という姿勢が、好印象を生みます。そして、どんどん新しいことを教えてもらえます。
心得その2は、「貪欲であれ」
「謙虚さ」と矛盾するようですが、バーの酒は、酔うためのものではなく、味わうためのもの。いい酒には必ず、それが誕生し、現代まで飲まれている理由、作り手の歴史とその酒を飲んできた人たちの文化があります。
それを知ること、そして、実際に酒を味わいながら、物語にひたることは、職場のストレスや、部屋の中のたまった洗濯物などから遠く離れた、バーにいるからこそできること。
「ここは行きつけにしたいな」――こう思えるバーに出会ったら、謙虚な姿勢で、いい意味での好奇心たっぷりに、お酒のことをいろいろと聞いてみてください。
そうして通っているうちに、「こいつとは酒の話ができそうだ」という、常連さんが現れます。そうなってくると、話題はお酒に限らず、仕事のこと、そして人生のことに広がっていき、会社の上の人たちからは聞けない、生きた人生指南が受けられるようになるのです。
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