酒は大人の教養である―その10.ビール 後編
春本番。ビールがおいしい季節です。
前回は、ビールには、大きく分けると、上面発酵(高めの温度、短期間で発酵させるタイプ)のエールやベルギービール、そしてドイツのピルスナーのようにそれより長い時間、低い温度で発酵させる下面発酵のビールの2種類があることをお話ししました。
今回は、その2種類も含め、実際にバーやパブでオーダーする際のヒントになる、代表的な銘柄とその特徴をお伝えしていきます。
その前に、特にビールのオーダーの際に、よくある「残念なこと」について、ふれておきたいと思います。
過去の記事でも言及したことと思いますが、せっかくバーで高いお金を出して飲むのに、以前飲んだことのある銘柄を指定して、「○○ありますか?」と、メニューも見ずに(メニューのないバーでは、品ぞろえも聞かずに)注文してしまうのは、はっきり言って、二重の意味でもったいないです。
バーの品ぞろえには、それぞれのコンセプトがあるので、初めてのバーでは、いままで飲んだことのない銘柄に出会える可能性が高いです。
そして、バーのマスターは、自分の店の品ぞろえにプライドを持っています。故に、初めての、しかもバー経験の浅そうな若いお客さまから、わざわざ置いていない銘柄を指定されると、顔には出しませんが、決していい印象はもちません。これは、ほかのお酒、たとえばウィスキーでも同じこと。
ではどう言えばいいか。「○○が好きなんですけど、似たような感じでおすすめはありますか?」これでOK。もしかしたら、すすめられた銘柄のほうが、さらにおいしかったりするかもしれませんしね。
ビールの世界は百花繚乱、
好みの銘柄を見つける楽しみも
少し話がそれました。最近は日本でも、クラフトビール(地ビール)造りが盛んで、お客さまから旅先で飲んだエールの話などをお聞きすることもちらほらあります。
クラフトビールと言っても、ルーツはやはりヨーロッパ。以下、代表的なタイプと銘柄をいくつか紹介します。
まずは、イギリスのエール。濃さによって、ペールエール、ブラウンエール、などと呼び方が違います。日本で飲める代表的な銘柄は、赤い三角が目印のバス・ペールエール、紅茶やトーストの香りがするニューキャッスル・ブラウンエール、そして、最近、六本木に直営のパブができたと噂のホブ・ゴブリンなどがあります。
このホブ・ゴブリンという名前は、伝説の魔女からきていて、魔女のいたずらのひとつには、「ビールの泡を消してしまう」というのがあるそう。ええー? と、真面目な我々日本人はびっくりしますが、英国風のユーモアなんでしょうね。
こんなエピソードが楽しめるのも、外国ビールの魅力のひとつです。
次は、ベルギービールですが、専門店もあり、それだけで本が1冊書けるほどいろいろな種類があります。
代表的なのは、小麦が原料のフルーティな白ビール。日本の銀河高原ビールのルーツです。ドイツでも小麦ビールは造られていますが、こちらはヴァイスまたはヴァイツェンと、ドイツ語で小麦を商品名に付け加えています。
代表的な銘柄は、なんといってもヒューガルテンです。
また、日本でよく飲まれているベルギービールは、修道院で造られているトラピスト・ビール。ハーブやスパイスを使った、複雑な味が特徴です。代表的な銘柄は、シメイ。利益を出してはいけないという戒律を守るため、原価を引いた分は途上国に寄付していることでも有名です。
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