「自分なりにがんばって就活して入ったけれど、この会社ではなかったのかもしれない…」。そんな悩める新人の声。「ようやく採用したにも関わらず、入社1年足らずで辞められてしまう」と絞り出すように語る人事担当者の苦悩。そういったものを、私たちはしばしば、お聞きすることがあります。
10月1日の正式内定日を控え、いよいよ社会人の仲間入りだ、という思いで期待を膨らませるみなさんがいる一方、若者の早期離職の報道などを耳にして不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査では、若年者(35歳未満)で、「これまでに転職したいと思ったことがある人」は71%。そのうち「最初に考えた時期」が入社1年以内の人は6割にものぼっています。
そこには、「イマドキの若者」では片づけられない、社会や会社の「事情」が関係しています。
日常の疑問に応えてくれる先輩がいない
弊社では、若手社員の活躍や定着を図ろうとする企業のためのサービス開発やコンサルティングを、長年行っています。私自身、多くの企業の採用現場や職場を見てきましたが、ここ20年で新人を取り巻く会社の職場環境は大きく変わっているというのが実感です。その最たるものが、年齢の近い、身近な先輩の不在です。
かつては、同じ部署に1~2歳上の先輩社員がいて、仕事の進め方から書類の整理の仕方、日常のちょっとした疑問や公私にわたる人間関係の悩み相談まで、社会人としてのイロハを指導し、職場になじむようフォローしてくれました。
困ったらすぐ聞ける相手がいることが、セーフティーネットになっていたのです。来年の自分、3年後の自分、といった形で、近い将来の自分を具体的にイメージできるような存在が身近にいて、ステップを踏んで育っていくための環境が整っていたともいえるでしょう。
これに対し、90年代以降、ITによる効率化や業務のアウトソーシングなどが進みました。また中にはリストラなどで人員削減したケースもあり、同じ職場に年齢の近い先輩社員がいない、一番年が近い人でも10歳以上離れているというケースも、稀ではありません。
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