単純に考えると、価格を上げれば売れ行きは悪くなる。けれども、売り上げ全体が下がるかどうかはわからない。利益が下がるかどうかもわからない。さらに、顧客満足度すら、下がるかどうかわからない。
面白い研究が『スマート・プライシング』で紹介されている。価格を1%上げた場合、平均して収益性は10%近く上がるという。この改善率は、広告費や固定費の削減を大きく上回る。
そうはいっても、値上げは簡単ではない。下げても売れないのに、上げたらもっと売れない。ディズニーランドのように人気のあるサービスならいざ知らず、もはや安さくらいしか売りがないコモディティ商品ではどうすれば、と。
わからなくもない主張だが、ここで少し視野を広げてみよう。価格を上げるという試みは、単に価格を鉛筆で書き換えるだけでは終わらない。
価格を変えると同時に、商品の品質や売り方もまた、一緒に変えるのである。利幅が大きくなれば品質向上や、何よりターゲットの絞り込みが可能になるから、顧客の具体像がより見えてくる。
こういうと今度は、高品質・高付加価値で価格を上げる話になりそうだ。韓国や中国の企業の攻勢が強まっているから、日本としては品質の高さで勝負するという戦略である。このところの家電産業を見ていると、それほど効果的とも思えない。
理由は簡単だ。大量生産で経験を積めば、いずれ品質も良くなっていく。必ずキャッチアップされるのだ。
同じカテゴリーの中で品質を向上させたくらいでは、根本的な解決には至らない。では、どうするか?
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