高くても買いたいもの、ちょっといいコーヒー
これについてはマーケティング研究の第一人者として知られるP・コトラーが、新著『8つの成長戦略 低成長時代に勝ち残る戦略的マーケティング』(2013年5月刊行)に好例の一つを取り上げている。コモディティ商品の一つと考えられるコーヒーを、コーヒー自体の高付加価値化だけに依存せず、儲かるビジネスにした、スターバックスの事例だ。
良いコーヒーを作るだけで価格は上げられない。そこでスターバックスは、カフェで優雅にという、新しいコーヒーの飲み方を作り出した。
価格を上げる差別化をしたければ、一歩踏み込んだ戦略が必要になる。同じコーヒーで非常に興味深いのが、ネスレ日本のグループ企業、ネスレネスプレッソ社が力を入れるコーヒーマシン「ネスプレッソ」だ。
コーヒーメーカー各社は以前から家庭用高級コーヒー市場の開拓を狙っていた。最終的な成果はまだ見えないが、「ネスプレッソ」からは、彼らがいかに真摯に、価格を上げる方法を考えてきたかがわかる。
コーヒー豆そのものの販売を、ネスレはしてこなかった。安く仕入れられるコーヒー豆自体をただ売っても、当然儲からない。ネスレが最初に目をつけたのは、一手間かけてコーヒー豆を加工するインスタントコーヒーだった。ここから初めて差別化が可能になった。
「ネスプレッソ」専用マシンでは、個別包装されたカプセルを利用して、飲み切りの分量をいれることができる。1杯当たりの価格で考えると高くなるが、何より家庭で従来飲まれてきたようなインスタントコーヒーと比べて格段においしい。
コーヒーマシン本体は廉価に抑えられている。この機械自体では利益は出せず、もしかすると赤字なのかもしれない。要するに、コーヒーのカプセルを実際に買ってもらうことでビジネスになるのだ。
単に顧客のイニシャルコスト(=導入費用)を下げただけではない。機械で利益が出てしまうと、機械での競争が生じる。そうなったときに何が起こるのかについては、家電産業を見れば明らかだ。
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