「おいしい」と感じるのはなぜか?
カプセルは、「近所のスーパー」にないので、アップルストアのようなお洒落な専門店か、インターネットで購入するしかない。販路が随分と限られてしまうが、普通のインスタントコーヒーのようにセールで値下げされる心配はなくなる。
コーヒーマシンが普及すれば、家庭で飲むコーヒーのイメージ全体が180度変わるかもしれない。従来のインスタントコーヒーにおいしいというイメージはあまりない。人に自慢できるような代物でもない。だが、「ネスプレッソ」は違う。機械はキッチンの隅ではなく、リビングに堂々と置かれるだろう。来客があれば空のカップを出し、自分でコーヒーを入れてもらうことになる。
安いコーヒーだと思って飲めばおいしくないが、高いコーヒーだと思って飲めばおいしく感じてしまう。印象が変わると味も変わる。
まずいから安いのではない。安いからまずいと感じるのだ。人間の味覚は、それほどしっかりとはしていない。
思い切って価格を上げることを考えてみよう。少しずつ品質を向上させる程度では問題は解決しない。価格を上げ、そこから見えてくる具体的な顧客を相手にしながら、彼らが本当に求めるサービスや価値を考えるのだ。
ちなみにこの作業は、教科書にしばしば登場する「マーケティングミックス」の応用でもある。製品・価格・流通販路・プロモーションを顧客に向けて最適化させるシンプルな枠組みだ。覚えるのは簡単だが、自在に使いこなすには一生かかるといわれる。今回は価格を切り口にしたが、新しいビジネスを模索し、常識を乗り越えるツールとして、活用してみてほしい。
※2013年4月22日 ネスプレッソのカプセルの記述、およびコトラーの新刊書籍名について、修正を行いました。ご指摘ありがとうございました。
【初出:2013.3.23「週刊東洋経済(入門日本経済)」】
(担当者通信欄)
景気がよくなってくるのをなんとなくでも感じると、実際のところ収入がたいして増えたわけでもなかろうに、無駄遣いの言い訳なのか「ちょっとくらい高くても満足いくものを」と思いがちな今日この頃です。カスタマイズが可能なカフェで、牛乳を豆乳に変えたり、シロップを追加したり…そうして、より好みに合う飲み物を求める場合、追加で払った金額以上の満足をモノから得られるのは日々実感することです。しかし、たとえばコンビニで同じ味の飲み物が少し安く買えるとしても、カフェのテイクアウトを選んでしまうことはままあるでしょう。お金を少し多めに払っているからこそ向上する満足度を、無意識に求めてのことなのかもしれません。
さて、水越康介先生の「理論+リアルのマーケティング」、最新記事は2013年4月15日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、クルマは日本を救えるか?)」に掲載です!
【就活生に期待する能力、社員に期待する能力?】
就職活動シーズンのいま、最初の関門エントリーシート、ESにこめられた意図を考える。ESが求めること、それは実は、応募者だけが考えればいいものではない!?
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら