仕事がデキる人は走りながら脳を鍛えている 長時間のデスクワークが脳を退化させる理由
⑤ 脳細胞の成長因子「BDNF」が増える
息が上がるぐらいの中強度の有酸素運動を継続的に実行すると年をとっても神経細胞(ニューロン)が新しく再生されたり、毛細血管が増加することがわかっています。そのため、ジョギングなど中強度の有酸素運動を継続すると、心臓や肺の機能が高まり酸素が体の隅々まで行き渡ります。
そこで二酸化窒素が発生して血管が柔らかく強くなって、破れたり、詰まったりしにくくなるのです。また、有酸素運動によって、脳内で傷ついた毛細血管の代わりに、新しい毛細血管がつくられます。それによって、さらに新しい神経細胞ができ、シナプスも生み出されるので、一度衰えた「脳内ネットワーク」を強化することができます。
体を鍛えながら脳を鍛える走り方のコツ
とはいえ、ただやみくもに走ればいいわけではありません。走って脳細胞を増やし、脳機能を全体的に高めるためには、適切な基準があります。それは自分にとって適度な速さをキープし続けること。そのときの気分でのんびり走ったり、逆にむやみにスピードを上げ過ぎてしまったりしては、せっかくの脳への効果が半減してしまいます。
では、自分に合った速さを見つけるにはどうしたらいいのか。ポイントとなるのは「運動強度」です。運動強度とは、走っているときに体にどれくらいの負荷がかかっているのかを、脈拍などをもとに数値化したもの。例えば同じ距離を走るにしても、スピードの速い遅い、坂道か平坦な道かによって脳や体が受ける刺激はまったく異なります。運動強度を何パーセントに設定するのかで、得られる効果も変わってくるのです。
脳を効果的に鍛えるためには、【運動強度60~80%のランニングを1日20~30分×週3回×3カ月】という基準で行うのが最も効果的です。
「なぜ?」と思った方のために、裏付けとなる実験結果をいくつかご紹介しましょう。英国ケンブリッジ大学のキャロル・ブレイン博士の研究によれば、運動不足はアルツハイマー病の22%に影響し、1週間に3回、20~30分間の有酸素運動で改善効果が表れるとしています。また、2015年に発表された米国の研究「ランナーとウォーカーの健康調査(National Runners, and Walkers and Walkers, Health Study)」による報告では、アルツイマー病予防に効果のある運動のひとつとして、毎週75分間のランニング(週3回に分けると1日25分)が挙げられています。
ほかにも「1日40分の有酸素運動を週3日実施で海馬が大きくなった」とか「15分以上のジョギングを週3日行うことでアルツハイマー病の発症を予防できる」といった報告もあります。実験するうえでの細かな設定は異なるものの、これらを総合的にとらえると、先ほどの基準【運動強度60〜80%のランニングを1日20~30分×週3回×3カ月】で行うのが、脳に刺激を与える最低ラインと言えるのです。
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