サウジがテロ拡大の「犯人扱い」される理由 オイルマネーで原理主義を世界に「輸出」

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イスラム過激主義の世界で、サウジは「放火魔と消防士両方の役割を果たしている」と、ブルッキングズ研究所のウィリアム・マカンツ上級研究員は指摘する。

サウジはジハード主義者たちにイデオロギー的な支柱を与え、「真の信仰者とそれ以外、イスラム教徒と非イスラム教徒を明確に区別する有害なイスラムを推進してきた」と、マカンツは語る。その一方で、「テロとの戦いで、(サウジは)米国のパートナーでもある」。

サウジの指導者たちは、欧米諸国と良好な関係を維持したいと考えており、ジハード主義的な暴力はサウジさえも危険にさらす脅威と考えている。実際、サウジ政府の統計によると、ISは今年に入ってからサウジ国内で25件のテロ事件を起こしている。

しかしサウジの行動は、イランとのライバル関係にも大きく影響を受けている。またサウジ国家の正当性は、復古主義的な信仰を掲げる宗教指導層に支えられている。こうした相反する目標が、サウジにひどく矛盾する行動を取らせてきた。

ノルウェーのテロ専門家トマス・ヘグハンメルは、サウジによるワッハーブ主義拡散の最も重要な結果は、イスラム教の進歩を遅らせたことではないかと語る。サウジはイスラム教が、多様でグローバル化された世界に自然に適応していくのを阻止したというのだ。

東南アジア諸国に顕著な影響

サウジの「布教活動」は目を見張るほど広範なもので、イスラム教徒がいる国ほぼすべてに及ぶ。壮麗な建造物や、説教や教えなどのソフトが、サウジ政府、王室、慈善団体、後援組織(イスラム世界連盟、世界イスラム青年会議、国際イスラム救済機構など)など、さまざまなルートを通じて届けられる。

ただ、サウジの「布教活動」の影響は各国の状況によってばらつきがあるようだ。アフリカと東南アジアの一部諸国では、従来の宗教文化の著しい保守化が観察されている。最もわかりやすい変化は、スカーフ等で髪を隠す女性や、ヒゲを生やす男性が増えたことだろう。

一方、欧州では、サウジの影響はイスラム教徒コミュニティの過激化を促す一因にすぎないように見える。パキスタンやナイジェリアのように分断が目立つ国では、サウジの莫大な資金とイデオロギーの流入により、宗教的な分断は悪化した。

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