サウジがテロ拡大の「犯人扱い」される理由 オイルマネーで原理主義を世界に「輸出」

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イスラム教徒がごくマイノリティにすぎない多くの国では、サウジが推進する排他的なイスラム教スンニ派(ユダヤ教徒やキリスト教徒、イスラム教シーア派やスーフィズムなどを中傷することも多い)が、アルカイダやISなどのジハード主義組織に加わろうとする者の増加を促した可能性がある。

「異なる信仰に対する排斥的な感情を煽ると、そのメッセージを受けた人は(過激派の)誘いに傾きやすくなる」と、民主主義防衛財団(ワシントン)のデービッド・アンドリュー・ワインバーグ上級研究員は指摘する。

英訳コーランを勝手に編集

その最たる例はサウジ自身かもしれない。サウジは、ウサマ・ビンラディンを生み出しただけでなく、9・11テロのハイジャック犯19人中15人を送り出した。2003年の米国によるイラク侵攻以降、イラクで自爆テロを起こした外国人で最も多いのはサウジ出身者だ。ISの外国人戦闘員の構成を見ても、サウジ出身者はチュニジア人に次ぐ第2位(2500人)だ。

トルコのイスラム聖職者メフメト・ゴルメスが、今年1月にサウジの聖職者から聞いたところによると、サウジ当局はこの頃、1日で47人のテロ容疑者を処刑した。このうち45人がサウジ国民だった。「イスラム教を10~15年間学んできた自国民を殺すなんて、教育システムがどうかしているのではないか」。

ワッハーブ主義は、多元主義、寛容性、科学や学びへのオープン性というイスラムの伝統を傷付けていると、ゴルメスは語る。「悲しいことに、その影響はイスラム世界ほぼ全体に広がっている」。

サウジの小さな措置が、論争を巻き起こすこともある。サウジは20年以上にわたり、コーランの英訳を配布してきたが、その冒頭に「あなたの怒りに触れた者(ユダヤ人など)、あるいは道に迷った者(キリスト教徒など)」と、本来のテキストにない内容を括弧書きで追加している。

ジョージ・ワシントン大学のサイード・ホセイン・ナスル教授(注釈つき英語版コーラン『ザ・スタディー・コーラン』の編者でもある)は、この追加は「完全に異説であり、イスラムの伝統に何の根拠もない」と指摘する。

こうしたことから、過激派とテロ対策に取り組んできた多くの米政府高官は、外交的な影響を恐れて明言こそしないが、サウジの活動について悲観的な見方をするようになった。

しかし一部のイスラム研究者は、現在の過激主義やジハード主義の高まりは、サウジに最大の責任があるという考え方に異論を唱える。イスラム主義テロが拡大した背景には複数の原因があるというのだ。その原因とは、中東の世俗的政府が抑圧的な政策を取ってきたことや、社会が分断し不正義がまかり通っていること、インターネットにテロリストのプロパガンダがあふれていること、1970年代のアフガニスタンからイラクまで米国がイスラム世界に介入してきたことに不満が募っていることなどだ。

「米国人は人であれ、政党であれ、国であれ、『犯人探し』が好きだ」と、ロバート・S・フォード元駐シリア米国大使は言う。「だが現実はずっと複雑だ」。

(執筆:Scott Shane記者、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Services
 

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