「サウジ宗教警察」と戦う無謀な男の正体

イスラム教に縛られる国で聖職者に物言い

サウジアラビアの宗教警察の在り方に疑問を呈すアフメド・カシム・ガムディ氏と妻のジャワヒル氏(写真:Handout via The New York Times)

成人してからほぼずっと、アフメド・カシム・ガムディ(51)はサウジアラビアの宗教警察で働いてきた。宗教警察は正式名称を「勧善懲悪委員会」と言い、西欧化や世俗主義、非常に保守的なイスラム教の慣行に合わないものすべてからこの国を守るための組織だ。

宗教警察は麻薬密売人や密造酒業者(この国ではアルコールは禁止されている)の摘発といった、普通の警察に近いこともやっている。だが「委員会」(とサウジの人々は呼ぶ)の面々の勤務時間の大半は、西欧どころかほとんどのイスラム諸国から見ても異質なほど厳格な社会規範を維持するために費やされる。

よく摘発の対象となるのが、結婚していない男女が同席する場だ。サウジの聖職者によれば、これは密通や不倫、家庭崩壊、婚外子の誕生や社会の崩壊の原因になり得る。

宗教ではなくアラブの伝統に縛られている

長年にわたって取り締まりに携わった末、ガムディは聖都メッカの委員会の責任者に昇進した。さまざまな規範に疑問を持つようになった彼はコーランをひもとき、イスラム的行いの手本であると考えられている預言者ムハンマドやその仲間たちの物語の中に答えを求めた。だが彼が見つけた「答え」は驚くべきもので、そこから彼の人生は変わった。イスラム教の最初の世代の人々にとって異性との交流は珍しいことではなく、そのことを問題視している人もいなかったようなのだ。

そこで彼は声を上げた。新聞に寄稿したりテレビに出演したりして、サウジにおいて宗教として実践されていることの多くは、実際にはイスラム教と混同されたアラブ文化の慣行だと説いたのだ。

サウジアラビアでは、多くの女性がベールを被っている(写真:Sergey Ponomarev/The New York Times)

サウジでは祈りの時間に店を閉めなければならないし、女性が自動車の運転をすることは禁止されている。だがどちらも必要のないルールだと彼は述べた。たとえば預言者の時代には女性もラクダに乗って移動していた。ガムディに言わせれば、ベールをかぶった女性がSUVを運転するよりこのほうがよっぽど挑発的だ。

ガムディはさらに踏み込んで、女性が覆うのは顔だけでいいし、それも本人がそうしたいと望む場合だけだと主張した。自分の信念の深さを示すため、彼は妻のジャワヒルとともにテレビに出演した。ジャワヒルは顔を露出させ、化粧もしてカメラに向かって微笑んだ。

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