「サウジ宗教警察」と戦う無謀な男の正体 イスラム教に縛られる国で聖職者に物言い

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KAUSTの前例と呼べるのが、やはり宗教界からの干渉を断った国営石油会社のサウジアラムコだ。王族たちはイスラム的価値観を称える一方で、カネを稼ぎたいとかイノベーションを起こしたいと思うときは聖職者に助言を求めることはなく、それどころか壁を作って聖職者たちを締め出す——そんな大いなる矛盾を体現している存在だ。

大半の聖職者は国王への敬意から批判を慎んだ。だがある高位の聖職者が視聴者電話参加番組でこの問題を取り上げ、男女共学は性的嫌がらせや不純異性交遊、勉学に集中できない、夫の妻に対する嫉妬や性的暴行といった問題を引き起こす危険があると主張した。

「男女同席には堕落を招く要素が多く、その害悪は大きい」とその聖職者は述べた。そしてもし国王が男女共学にする計画を事前に知っていたのなら、やめさせただろうと述べた。

宗教界との長い戦いの始まり

だが実際には共学は国王のアイディアで、この発言は国王の不興を買った。国王は問題の聖職者を解任した。

メッカで働いていたガムディはこうした動きを見て、国益になると思うプロジェクトを宗教界が応援しないことにいら立っていた。そこで彼は、しまい込んでいた研究書類を取り出して2本の長い寄稿文にまとめ直し、2009年に地元紙『オカズ』に発表した。

これがガムディと宗教界の長い戦いの始まりだった。彼は寄稿文の発表を続けたほか、テレビにも出演してほかの聖職者たちと対峙した。彼らはガムディを侮辱し、経典から別の証拠を集めていた。

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