バングラデシュを襲った過激派「JMB」の正体 政府が唱える"IS関与なし"は本当か
7月1日夜、バングラデシュの首都ダッカで起こった立てこもりテロ事件は、人質20名、うち邦人7名の犠牲者を出す最悪の結果となった。
事件に対して、イスラム国(IS)が犯行声明を出す一方、バングラデシュ政府は「ISの関与はない」(アサドゥザマン・カーン内相)と国際テロ組織の関与を認めていない。同政府の見解に欧米メディアは異を唱え、「バングラデシュ政府は認めたがらないが、ISによる犯行は明らか」といった論調が主流だ。
だが、ISという結論づけも、思考停止に陥る。本当に政府の言うことはでたらめか。南アジアの貧困国である同政府の置かれた状況は複雑である。報道されているような、「ISが関与するバングラデシュで起こったホームグロウンテロ」という認識だけでなく、拡大する域内テロの脅威、南アジア周辺の大国に翻弄されながらの弱小国なりの舵取り、と認識することによって、その背景の全体像が見えてくる。
テロリスト養成キャンプが点在
今回の実行犯らが所属していたとされる、「ジャマトゥール・ムジャヒディン・バングラデシュ」(JMB)とは、いかなるテロ組織か。同組織は1998年に結成され、2005年8月に起こったバングラデシュ同時爆破テロ事件へ関与したことで知られる。その活動目的は、「シャリーアに基づくイスラム国家の樹立」であり、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、クウェート、バーレーンなど、個々の異なる国際資金源があるとされる。「インド亜大陸のアルカイダ」と協力関係にある「アンサルラ・バングラ・チーム(ABT)」と並び、同組織は現在特に活動が目立つ、バングラデシュの2大過激派組織の一つである。
このJMBの脅威は、同国だけでなく、インドでも問題となりつつある。インドの西ベンガル州は、バングラデシュと同じベンガル語を話すベンガル人が住む地域であり、同州のイスラム教徒もいるため、バングラデシュから越境してインドに入り込むことはたやすい。そのため、同組織はバングラデシュの組織でありながら、実はそのテロリスト養成キャンプがインド東部に点在している。
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