凡人でも、コツをつかめば天才になれる 名コーチ、高橋慶彦の天才論

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それから少しして、高橋慶彦と同じ話をしたことがある。1970年代後半から広島の黄金期を1番打者として支えた高橋も、2人と同じ感覚を持っていた。

「ボールがスッて来るでしょ? ボールの芯を見て、カーンって打てばいい。それがバッティングのすべて。ボールをスッて見て、カーンって打つわけです」

日本記録の33試合連続安打を保持する高橋は、長嶋や中島と同じく天才的な才能を持つ選手だった。だが、「ボールがスッと来たら、カーンって打つ」は、天才だから理解できるわけではないという。

「天才だから理解できるわけではなく、打てるようになればその感覚がわかってくる。要はコツだからね、全部。なぜ練習するのか、努力するのか。コツをつかむためにやっているわけです。そのコツをつかむのが下手なヤツは、やっぱり伸びていかない。コツをすぐに習得できる選手は伸びていきます」

包丁の世界とバッティングは一緒

高橋は92年に現役引退後、解説者、ダイエー(現ソフトバンク)の打撃・走塁コーチを経て、04年にロッテの1・2軍巡回コーチに就任した。取材当時はロッテの2軍監督を務めている頃で、優れた言語感覚で西岡剛(現阪神)、今江敏晃らを育てた名指導者として知られていた。

コツを習得する術について、高橋はこんな例え話をしてくれた。

「包丁の世界では、まずはかつらむきで技術を覚えるでしょ? 最初は包丁ひとつ扱えないから、力が入るじゃないですか。ところがうまくなると、力が抜けてくる。それはコツをつかんだから。バッティングも一緒です。コツを体に教えてやらないといけない。そうすると無駄な力が抜けて、うまくできるようになる。僕らは仕事としてそういうことをやっています。若い子には『何で無駄な力を入れるかな?』って言うんだけど、コツを知らないから力を入れるわけです」

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