中国を牽制する意味で報道?
レアアースという聞きなれない元素が一躍スポットライトを浴びたのはやはり、尖閣諸島事件を発端とした、中国の禁輸事件以降のことだ。2010年9月に起こった中国漁船の乗組員を海上保安庁の巡視船が拿捕してから、日中関係はかつて見られないほど悪化してしまい、もはや修復は不可能な状況にまで発展してしまった。
日中関係悪化の象徴の一つが「レアアース」だといっても過言ではない。中国の反応はいかにも子供っぽい印象をぬぐえないが、日本の対応はさらに幼稚で考えの浅い対応に終始したといわざるを得ない。その結果、中国では全国で反日デモが起こり、日本の企業や商店が暴動で打ち壊される事件にまで拡大してしまった。その裏には中国は世界第2位の経済大国であり、「もう日本なんかには馬鹿にされないぞ」といったナショナリズムが渦巻く。だが、中国政府も決してうまく行っていない経済運営や、貧富の差に対する国民の不満を外交問題にすり替えることで、習近平体制の安定化を演出するといった側面もあるようだ。
一方、日本はレアアースの代替技術やリサイクルで、日本の技術を総動員した対策をスタートさせた。いろいろな機会をとらえて中国の行き過ぎた行動をけん制する報道が見られた。その極端な例が「南鳥島のレアアース資源開発」である。だが、中国の資源関係者も馬鹿ではない。この程度のニュースに踊って「しまった、日本からレアアース資源が出てくるのか」などと考える「極楽とんぼ」は、私の知る限り見たことも聞いたこともない。少なくともレアアースに関する限り、中国の方が、日本よりも一枚も二枚も上である。
豪州の鉱山以外は、経済合理性はない
私はレアアースビジネスを始めて、すでに35年になる。中国との取り組みでいえば、1979年に日本人として初めて上海の躍龍レアアース工場に入り込み、工場内の被爆状況(ウランとトリウム被害)を目の当たりにして、レアアース産業の将来性と同時にその危険性を実感した。
以来、つねに日本のレアアース市場で第一線に立ってビジネスを続けてきた。
特に資源調査については世界のレアアース鉱山の開発の可能性を探る機会に恵まれた。英国の地質学会でも第一人者の元メタル経済研究所主席研究員の西川有司氏等とともに、1995年までに、ほぼ可能性のある世界のレアアース鉱山を調査してきた。
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