南鳥島レアアース開発は30年かけても難しい 「夢の海底資源」報道に覚える違和感

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1年後の同新聞の2012年6月27日の記事にはさらに「2012年の後半の需要が期待できない」と書いた。市場の一部にはそろそろ反転もあり得るという意見もあった。私の見立ては新しい需要がおきることは考えづらく、景気が戻るにはまだまだ時間が必要だと報告した。結果はみての通りだ。レアアースビジネスの現場に立ってきた者にしてみると、市場が現在のような結果になるのは当然と思っていたので何ら驚きもない。

一過性のレアアースブームをとらえ、世界中のレアアース鉱山は市況を見て気色だった結果、レアアースのような小さな市場(年間12万トン市場)に、世界中の資源関係者(ヤマ師)が群がった。

私は、2011年以降は毎年行われるトロントのPDAC(トロント鉱山見本市)に参加しているが、今年3月も世界120各国から1000社が出展するPDACに参加した。同見本市は、参加者総数3万人という、世界最大の鉱山見本市である。ここでは、中国レアアースの禁輸をとらえて、世界中のレアアース資源の開発話で持ちきりになった。

資源ブームが去ったにもかかわらず、レアアースのブースには一番多く参加者が集まっていた。そんな雰囲気の中で、世界中のレアアース資源の開発話が日本の需要家に持ち込まれ、経済合理性のない鉱山開発話に踊らされているのが実態である。レアアースの開発案件の数は多いが、何れもリスクが高く具体化出来ない案件ばかりだった。

ところが今年も相変わらず中国人の参加者は多く、需給バランスが反転したレアアース市場でまだレアアース資源を開発する意欲満々のように見受けられた。日本の資源関係者が冷ややかにレアアースを捉えているのとは反対に、中国の鉱山関係者は中国国内から世界のレアアース資源開発に拡大するといっているのを聞き、驚きを隠せなかった。

さて、日本の資源開発は大手商社を中心に、過去5年間は一種のブームと言ってよいほど活発だった。日本政府は国家の資源政策を厚めに策定したのでその恩恵に浴したのは大手商社であった。各社の年間利益の半分以上は資源投資関連で占められたようだ。いずれも非鉄金属の中でもメジャーメタルが中心で、レアメタルやレアアースの投融資に興味を持ったのは双日や豊田通商などで三井物産や三菱商事、住友商事といった大手は、メジャーメタルにしか注力してこなかったのである。

従ってMETI(経済産業省)もJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)も、資源確保戦略のための補助金制度をせっかく策定しても、生き金にできるアイデアが出てこない。資源メーカーは体力不足で、リスクを負うことができないため、総合商社が挑戦しているのがこれまでの流れである。総合商社はJBICなどの制度金融を利用しながら、銅を中心にLMEヘッジを利用して資源確保を進めて来たがレアメタルやレアアースは市場規模の壁もあってうまく行っているとは言えないのが実態だ。

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