リストラ法制が不備だから生じる陰湿な抜け道
そこで制度の抜け道を何とか使おうと“キャリアデザイン室”などを使って“実質的退職勧奨”と受け止められている時間のかかるリストラ作業をだらだら始めるのだが、これがバカらしいまでに虚しく、非効率だ。
なおリストラをしようとする大企業では、現状だとどのくらいのやり方まで違法でないか、またリストラされようとしている社員がどのような反応をするか、裁判をちらつかせる社員にはどう対応すべきか(結局は土壇場で裁判はしない、とタカをくくられている)、などのノウハウを集めた人材コンサルティング会社からアドバイスをもらっていることが多いので、個人が司法をちらつかせて戦おうとしたところで大抵勝てない。
しかし、こんな陰湿なリストラもブランドイメージに響くので静かにやりたいところなのだが、日本ではすぐメディアにしばしば不正確で感情的な議論で騒がれる(東洋経済オンラインは正しく冷静な議論をしているので、東洋経済以外の悪質な経済誌についての話である)。
ちなみに東洋経済オンラインのようなダントツの一流経済誌までが特集で“労働者の不安は収まらない”みたいなトーンで書くものだから、会社側もますます動きづらくなるのだが、むしろリストラを法律で縛った結果、現在のような陰湿な抜け道しかないような状態にしている政治と法律が悪いと私は思う。日本企業の多くで横行する陰湿な解雇のやり方は、ソニー個別の問題というより社会の解雇制度不備の問題である。
過去のしがらみで成長分野におカネを回せない
社員が高齢化し、新しい商品を生み出す革新的な精神が衰え、他国企業との競争に挟まれつつ、過去の無駄な投資が足かせになりジリ貧情勢が続く。
そして改革に必要なリストラに踏み出そうとしても過去のしがらみを切れないシステムなので、成長分野に回すべき時間とおカネと労力が後ろ向きのリストラ対策で消えていっている。おまけに規制にがんじがらめにされ、未来の成長分野に思い切り投資できない――何か、どこかの国で起こっていることの縮図みたいな話である。
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