「ソニーのリストラ批判」にモノ申す 日本の電機メーカーがリストラせずに、どこがする

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ソニーは売上高も営業利益も一時期を除いて右肩下がりだ。リストラに伴う特別損失も続き、昨年は4000億円を超える最終赤字を記録した。恐る恐る最近の決算短信を読んでみると、映画や金融分野の成長で液晶テレビやゲームの低下を補っているかに見えるが、増益に見えてもその多くの部分はソニーモバイルコミュニケーションズの連結化に伴う上積みである。

ちなみに決算資料を見ていると、関係なさそうな事業部門がやたらと多く、ノンコアとコアがごっちゃ混ぜになってグループの方向感が不明であり、おまけにその大半の部門で収益性が悪い。

これは不採算部門を多く抱える大企業でよく行われることだが、間接費振り分け配分を変えたら各部門の収益性がどれだけ悲惨な数字なのか、若干楽しみですらある。とにもかくにも今のソニーは訳がわからない事業ミックスになっていて、ビジネス間にシナジーが効いているとは考えづらい。

周囲を見渡しても、残念ながらソニーの存在感はすっかり消えてしまった感がある。一昔前はウォークマンにしてもテレビにしてもビデオにしてもDVDにしても、“ソニーナンバーワン”のイメージが強かったが、私が仕事の拠点にする香港やシンガポールでは、日本製品はパナソニックの大型テレビが一部残る程度で、いちばん目立つのはサムスンとLG、続いて意外にもフィリップスが健闘していたりする状況だ。ちなみに今私が住んでいるフランスでも、ソニー製品を目にしたことがない。

アップルとアジア勢の上位各社が、潤沢なキャッシュを使って新製品投資をし、巨大広告を打つ中、リストラモードの日本勢はただでも厳しい展開が続くが、後ろからは巨大な市場を後背に抱える中国メーカーも台頭してきている。そして過去と決別するためにリストラをしようとしても、解雇規制のルールに阻まれ身動きができない。

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