資本主義の行き過ぎを技術の力で救えるか? 弁護士から金融界に転身した男の本音

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塩野:個人投資家の懸念として、ものすごいリターンをうたう会社が一般向けに大々的な広告を打っていたケースがありました。こうした会社によって悪影響はありましたか。

北澤:甘言を用いるのはいちばんやってはいけないことです。資産運用で大もうけできるのであれば本職でやればいい。我々はせっかく稼いだ本業のおカネを着実に安定的に運用する。しかもお客様の手間をかけずに。ですから、「20%、30%増えますよ!」とは、口が裂けても言いません。

サービス開始から半年が経ちましたが、想定よりも多く8月現在で8000人以上の方にTHEOにお申し込みいただいています。無料診断された方も10万人を超えました。アクセスは朝の8時から9時が多いんです。通勤のタイミングにスマホで見ている。で、あとで時間がある時に申し込みする。お申し込みをいただいた方のプロフィールは20代から30代の方が54%、資産運用したことがない方が47%です。

塩野:なるほど、それは興味深いデータですね。今までタッチできていなかった層にアプローチできている。

北澤:時代が確実に変わる気がしています。

リーガルマインドはどこでも活かせる

塩野:北澤さんは弁護士からスタートし、投資銀行にいた華やかな時代を経て、30代後半でベンチャーに転身されました。最近は軒先弁護士、携帯弁護士なる言葉が生まれていて、弁護士でさえ食えなくなっています。のみならず会計士、税理士などの「士業」が軒並み苦労されている時代です。ボーダーを超えた北澤さんから、そういう方へのメッセージをお願いします。

北澤:資格を取った「士業」だから経験できることはすごくあると思います。ただ、そこにあぐらをかいてはいけない。弁護士になったから安泰だ、地元の名士だという時代は終わったと思います。

塩野:ずいぶん前に終わってしまいましたね。

北澤:ただ、ゴールドマンサックスの会長兼CEOのロイド・ブランクファインも、モルガン・スタンレーのCEOであるジェームス・ゴーマンも、元弁護士です。

塩野:ゴールドマン出身のロバート・ルービン元財務長官も最初は弁護士ですね。

北澤:リーガルマインドはいろんな業界に活用できるものだと思うんです。法曹界以外では資格が生かせない恐れを持ってしまうかもしれませんが、別に弁護士だからと固執する必要はありませんし、チャンスがあれば挑戦したほうがいい。

ただ、重要なのは弁護士としてしっかり仕事をしていることです。ルーチンワークになってしまって、自分のキャリアを形成できないと辛い。私が専門職を2回選んだのは、個の力を発揮できるまでやりたいという思いからでした。

弁護士としての専門性や、どういう仕事をしたか、どういう人脈を築いたか。そして機会が訪れた時に恐れないこと。そのうえでインスティンクトを大事にしてほしいですね。弁護士時代にとても優秀な人間を見てきましたが、弁護士でも成功していますし、他の業界でも成功しそうだなという人がたくさんいます。そういう垣根を超えていく人が増えれば、もっとビジネス界は面白くなるのではないかと思います。

(構成:高杉公秀、撮影:尾形文繁)

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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