人間より有能なAIの存在は「幻想」に過ぎない 今の浮ついたブームは再度失敗を招く

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「幻想」をまともに信じ込むべきではない(写真:iLexx / PIXTA)

今のブームは浮ついている

──ビッグデータ時代の到来、深層学習(ディープラーニング)の登場で、人間の知性を凌駕する技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えるとの予測さえあります。

最近も、クイズのチャンピオンを破ったIBMのAIシステム「ワトソン」ががん治療法を助言したと報道されていたが、これはAIが考えたというより、いろいろなデータを検索するコンピュータシステムがうまく動いたというだけの話。とかくAIが意識を持って自ら判断しているような書き方をしている記事が多すぎる。「鉄腕アトム」がいるわけではない。

今のブームは浮ついている。AIもビッグデータも、技術自体は大いに期待が持てる。問題は方向性だ。欧米の人が述べ立てる「幻想」をまともに信じ込んで、それに追随するのは絶対にやめるべきだ。過去にも失敗しているのに、根本的なところで反省していない。

──失敗とは。

第5世代コンピュータ研究開発プロジェクトのこと。欧米の考え方を表層的にとらえて単に効率を上げるシステムを作ろうとしたのだ。

これが目指したのは高速推論マシン。正しい論理命題を組み合わせ、高速化した推論で自動的に正解が求まると考えた。しかし、たとえば医学知識には「そういう可能性が高い」「データによれば7〜8割方は効果があった」というようなあいまいな部分がある。それにもかかわらず、もともと命題の意味内容を理解していない「機械」によって形式的に推論しようとした。それもハードウエアに論理命題をインプットして、推論操作を直接実行しようとした。だがこのシステムは柔軟性が乏しい。

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