孫さんガッカリ?IoT普及阻む決定的な問題 ケヴィン・ケリー氏が斬る!
3.3兆円もの大金を投じて、英ARM(アーム)ホールディングスを買収すると発表して世間を驚愕させたソフトバンクグループ。買収の目的はただ一つ、これから来るであろう、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)時代を先取りすることだ。
ありとあらゆるモノがネットにつながり、互いにやりとりをすることで、遠隔から操作・制御したり、計測することが可能になるIoTには、多数の企業が投資しており、今後関連ビジネスの急拡大が見込まれる。
しかし、WIRED誌創刊編集長で、テクノロジー界の思想をリードする存在として知られるケヴィン・ケリー氏は、IoT普及には高いハードルがあると見る。日本で7月23日発売となった『〈インターネット〉の次に来るもの ~未来を決める12の法則(原題はThe Inevitable)』で、人工知能(AI)やヴァーチャル・リアリティ(VR)など今後30年間に起こる、12の不可避な(inevitable)テクノロジーの潮流をまとめているが、IoTの未来にはやや懐疑的だ。一体なにが「足かせ」となるのだろうか。
インタビュー前編「ケヴィン・ケリー、『人工知能の未来』を語る」
最大の課題は「バッテリーの寿命」
――先般、ソフトバンクが英ARMを3兆円強で買収しました。ソフトバンクの孫社長は、IoTが将来ビッグビジネスになると見ているようですが、ケヴィンさんはどうですか。
1998年、『ニューエコノミー勝者の条件』にもIoTについて書いたが、実現するのにこんなに時間がかかるとは思わなかった。今後、実現により近づくだろうが、革命的で破壊的な技術になるとは思わない。
ただ、モノ同士をネットでつなぐだけでなく、そこにAIの要素を足せば大きな技術革新になるだろう。確かにIoTの流れは不可避だと思うが、今回の本でもIoTについてはあまり触れていない。最大の課題はバッテリーの寿命だ。バッテリー技術は着実に向上してはいるが、私たちの予想を超えるほどに著しいとは言えず、すべてのモノが「ずっと」つながり合っている状態に行き着くには時間がかかるのではないか。たとえば、毎週土曜日の朝に家中のバッテリーを替えないといけないなんて考えられるかい?
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