孫さんガッカリ?IoT普及阻む決定的な問題 ケヴィン・ケリー氏が斬る!
――講演などではトラッキングも人間社会に大きな影響を及ぼす一つだとお話しされていますが、私たちがよりトラッキングや監視に対してよりオープンで自らの透明性を増す、つまりプライバシーを「あきらめる」ことが、利点を享受するうえで重要だという視点はユニークです。
(トラッキングを)パーソナルサービスと考えればいい。私たちは誰もが、「個人」として扱われたいと思っている。私は自分の友人に自分のことを知ってもらいたいし、その情報に基づいて私を扱ってもらいたい。同じように私は、企業や政府にも私個人として扱われたいと思っている。
たとえば、スピード違反で捕まったとする。でも、私が通常はスピード違反をしないことや、チケットを切られた経験がないことがその場で警察官にわかれば心象は変わるだろう。私たちは、自分たちの個人的な履歴や好みにも基づいて扱われることを望んでいる。
最高にパーソナルなサービスを受けるには、最大限の情報を提供しなければならない。そうしたくない人もいるだろうから、そこは選択できるようにすればいい。しかし、そういう人は誰からも「数」のように扱われるだけだ。
選択できれば多くの人がプライバシーを公開する
――具体的にはどのような運用が考えられますか。
どの程度までパーソナル化を望み、プライバシーを公開するかを個々で選べるようにすればいい。驚くかもしれないが、その選択ができる場合、多くの人がよりパーソナルなサービスを望み、自らの透明性を高めるチョイスをする。アマゾンやネットフリックスを使う場合はそうすることで、より自分の好みにあったオススメを受けることができるし、友人には写真や誕生日などを公開することでより自分のことを知ってもらうことができる。
自らの情報を提供することによる問題は、多くの企業や政府が情報を一方的に受け取りながら、私たちにはその見返りがないことだ。政府は私たちの情報を集め、逐一監視しているにもかかわらず、私たちはそのメリットがない。