──15年以上にわたり、世界中の娼婦を取材しています。
世間では彼女たちを陰の存在としてとらえ、暗くて大変そうなイメージを持ってしまう。一面では間違いないが、それだけではない。たとえばタイ・バンコクへ行くと堂々と働いていて、「いったい何者?」とさえ思ってしまう。彼女たちに悲壮感は漂っていないが、反面で今の生活から抜け出したいとも思っている。陰と陽の振り幅が、普通の生活を送る人より大きい。多くの葛藤やもどかしさを抱える生き様に引かれているのかもしれない。
身一つでたくましく生きている
──戦場の娼婦をテーマに選んだ理由とは。
戦争と娼婦は、切っても切れない関係にある。普通の日常を送っていても、戦争や内紛によって娼婦に身を落とす人が当然出てくる。戦後の日本もそうだったが、彼女たちの生きている場所が戦場そのもの。爆弾テロや攻撃の恐怖だけでなく、客とのトラブルで殺される人もいるし、病気の危険と隣り合わせ。身一つでたくましく生きている。
──イスラム教徒が大半を占めるイラクでは、住宅地のビルの中で娼婦たちが隠れるように共同生活をしていました。
取材した当時は、サダム・フセイン政権が崩壊した2004年ごろだった。離婚したり夫に先立たれたり、訳ありの女性たちにとって生きるすべは売春になる。壊れた社会の中で、一つのシステムにさえなっている。今はもっと国が混乱しているから、娼婦の数は増えているだろう。
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