日本の「無戸籍者1万人」は、なぜ生まれるのか 「就学、結婚もできない現実」を生む5つの謎
「日本に戸籍のない人が1万人以上いる!」
そう言われて驚かない人がいるだろうか。
通常、戸籍は赤ちゃんが生まれて、自治体に出生届を提出することで作られる。ところが、なんらかの事情でこの出生届が提出されず、戸籍のないまま生きている人たちがいる。
彼らの生きる道は過酷だ。小学校すら通えない、健康保険証がないから予防注射はおろか、病院に行けない、身分証明書がないからまともな働き口が得られない、結婚・出産も困難を極める……。
そんな彼らに手を差し伸べ、戸籍の取得に尽力する活動を13年間にわたって続けてきた女性がいる。元衆議院議員で「民法772条による無戸籍児家族の会」代表をつとめる井戸まさえさんだ。
井戸さんは自らの子供が無戸籍児になった経験から、無戸籍者の支援活動を開始、これまで1000人以上の無戸籍者の戸籍取得に奔走してきた。その活動をまとめた『無戸籍の日本人』(集英社)が今、大きな反響を呼んでいる。そこに描き出される無戸籍者の生活ぶりはあまりにも衝撃だ。
なぜ今の日本でこんなことが起こるのか、どうしたらこの問題を解決できるのか、井戸さんに話を聞く――。
聞き手・水上 花(ジャーナリスト)
謎1 本当に今の日本に1万人も無戸籍者がいるのか?
――井戸さんの『無戸籍の日本人』を読んで、無戸籍者のあまりのすさまじい人生に言葉を失いました。こんな人たちがいることを、ほとんどの人が知らないと思うのですが、一方で「ホントに今の日本でこんなことが起こるの?」という素朴な疑問もわきました。無戸籍者が今の日本で少なくとも1万人以上いるというのは本当ですか。
そうですよね、私も自分が産んだ子が無戸籍になるという経験をするまでは、無戸籍問題など、まったく知りませんでした。
でも、戸籍がない人は確実に存在するのです。きちんとした統計はどこにもないので、1万人というのは「最低限、確実にそのぐらいはいる」という数字です。実際にはもっとたくさんいると思います。出生届が出せないなどの事情で、一時的に無戸籍になったことのある人を含めて累計すれば、20年間で6万人いることになるんです。相当な人数だと思いませんか。
トピックボードAD
有料会員限定記事
政治・経済の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら