日本の「無戸籍者1万人」は、なぜ生まれるのか

「就学、結婚もできない現実」を生む5つの謎

人目をしのぶように暮らしている人も多く、おカネを得るためには日陰の仕事を選ぶしかないことも。犯罪すれすれの場にいることも少なくありません。

本で紹介したケースでは、売春婦の母親とずっと安ホテルで寝泊まりをする生活を続けてきて、一度も「普通の家」で暮らしたことのない男性、母親が夫の壮絶な暴力から命からがら逃げだし、新しい地で知り合った男性との間に生まれたものの、出生届が出されないまま、貧困の中で成人した女性。彼女は自らの性同一性障がいも抱えて、ずっと苦しんできました。

貧困や暴力、病気などの困難にさらされても、どこにも相談できず、どこからも支援を受けられず、みんなそれでも必死に生き延びているんです。

謎4 「再婚禁止期間の短縮」は解決にならないのか?

――最近、「再婚禁止期間を短縮するべき」という最高裁判決が出たようですが、そうなったら無戸籍はなくなるのでしょうか。

「女性は離婚後6カ月間は再婚できない」と規定されてきた、民法733条には、昨年12月に違憲判決が出ました。この規定と、先に述べた民法722条の規定を合算すると、法律上、「誰の子供でもない」期間(80日間)ができてしまうことも、違憲理由のひとつです。これに従い、再婚禁止期間を100日に短縮する改正案が出されています。

しかし結論から言うと、再婚禁止期間を短縮しても無戸籍問題はなくならないと思います。

そもそも、先ほど述べたように7年前に、法務省から通達が出され、「離婚後の妊娠であることが医師により証明できれば、その子は前夫の子としてではなく、出生届を出せる」という特例ができました。この通達によって、離婚後に妊娠した場合の子どもについては、無戸籍になる恐れは法的にはなくなりました。

しかし、(法律上の)離婚前に妊娠していた場合は、子どもの父親は、法的には前夫とされてしまいます。つまり、結婚生活が破たんして、新しいパートナーとの間に子どもができたが、法律上はまだ離婚が成立していないといった場合です。これを解決できない限り、無戸籍児が生まれ続け、問題はなくならないでしょう。

私はこの旧弊な法律は廃止するべきだと思っています。廃止すれば、かなりの数の無戸籍児が救われる可能性があります。たとえば離婚後300日以内でかつ、婚姻後200日以降に生まれて、嫡出が前夫と後夫に重なる場合。この場合は「父未定」として出生届が出せるからです。

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