日本の「無戸籍者1万人」は、なぜ生まれるのか

「就学、結婚もできない現実」を生む5つの謎

――法務省では、2015年7月から無戸籍者の調査を開始し、現在の日本における無戸籍者は686人、うち成人132人(2016年2月10日現在)と発表しているようですね。ずいぶん数に開きがありますが。

実はこの調査は、法務省が自治体に調査票を出しているのですが、回答率がわずか2割程度なんです。しかも1歳未満の子は数に入れていないなど、実態を反映した数字とはとても言えないと思っています。

私が支援した中には、同じ自治体の母親教室で出会った人同士が無戸籍児の母だったというケースもありました。誰も簡単には口に出さないのでわからないけど、意外にみなさんの身近にも「無戸籍者」は、存在しているかもしれません。

謎2 なぜ無戸籍になってしまうのか

――そもそもなぜ無戸籍者が生まれてしまうのですか。

一番多いのは、離婚したあとに、新たなパートナーとの間に子どもができた場合です。

民法の772条の2項という法律があって、「法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される」と規定されています。そのため、たとえ離婚したあとにできた子どもでも、300日以内に生まれてしまった場合は、縁もゆかりもない前夫の子どもとして出生届を出さなければいけないんです。

私もこのケースでした。私の場合は離婚調停が非常に長引き、別居してから離婚が成立するまでにかなり時間がかかっています。その後、今の夫と結婚をして子供をもうけたのですが、この子が早産で法的離婚後300日以内に生まれてしまったんです。

出生届を出したところ、自治体から「この子は現夫の子とは認められない。前夫の子として改めて出生届を出すように」と告げられ、驚愕しました。こんなことを言われて納得できる人がいるでしょうか? まったく関係のない前夫の子どもとして出生届など出せるはずもなく、子どもは無戸籍状態に陥りました。

結局、私は法廷闘争を経て、七転八倒の末、現夫の子として子どもの戸籍を獲得しました。

この私のケースが判例となり、それから数年して「離婚後の妊娠については、現在は医師による妊娠時期の証明があれば、前夫の子ではないとして出生届が出せる」という特例(法務省民事局長通達)が認められるようになりましたが、そのことを知らない人も当事者には多いんです。

また申請先の窓口の対応も徹底されていないため、一時的にせよ無戸籍になってしまう人はなくならない状況です。

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