推定1万人!「無戸籍者」をどう救うべきか 現行の法制には数々の課題がある

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無戸籍問題は幼いうちに解決したほうが望ましいため、公的機関が積極的な役割を果たすことも必要となる(写真:KEN KEN/PIXTA)

法務省が把握する無戸籍者の数は626人にのぼる。だがそれはごく一部で、全国で1万人もいると推定される。彼らは出生届が出されず戸籍がないために、パスポートを取得できず、年金の請求も不可能だ。また契約行為を行えず、公的な資格を取得できないなど、多大な不便を強いられる。

このような無戸籍者を救済する動きが始まった。超党派で結成された「無戸籍問題を考える議員連盟」は7月23日、上川陽子法務相に対して、緊急の申し入れを行った。その内容は、まず法務省に設置された「ゼロタスクフォース」に総務省や文部科学省、厚生労働省からの職員や弁護士等専門家メンバーを加えて充実させること、そして2015年10月から導入されるマイナンバー制度に向けて、自治体の窓口や郵便局、コンビニなどで無戸籍解消の広報活動を行うことだ。

「ようやくスタートが切れた。無戸籍は人権問題だ。これからはタスクフォースと議連とが連携し、戸籍取得の手続きの簡素化などさらに内容を充実させたい」。同議連会長を務める野田聖子衆院議員は、無戸籍者問題解決に意欲を示す。

なぜ無戸籍が生じるのか

無戸籍が生じるのはなぜか。その原因のひとつが民法772条第2項後段だ。同条は「婚姻の取消若しくは取消しの日から300日以内に産まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」とする。「300日ルール」と言われるこの規定は、もともとは子どもに「父」を与え、保護するために作られた推定規定だが、今ではDNA鑑定など精度の高い検査方法があり、その存在意義は薄れつつある。そして今やこの規定が、かえって子どもの権利を侵害する結果を生みだしているのだ。

たとえば夫の暴力によって家を出た妻が、新しいパートナーとの間に子どもを産んだ場合だ。妻は夫に離婚を求めたくても、夫に居所を知られては暴力が怖くて裁判を起こせない。また懐胎時に外観上の婚姻実態がない場合、前夫を産まれた子どもの父としないためには「親子関係不存在確認の手続き」が必要だが、前夫にそれを求めるのを妻が嫌がることがある。

こうして民法772条に基づいて生まれた無戸籍者は、全体の7割を占めると言われている。

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