シェール大増産で、失業率0%になった町 賃金うなぎ上り、モーテルまで満杯
空港から市の中心部までは車で2~3分。目と鼻の先だ。市を縦断する幹線道路に入ると、まず感じたのは、轟音を上げて行き交う大型トレーラーの多さ。生産された原油や、採掘現場で水圧破砕に使う水や砂などを運んでいる(右写真)。時速100キロメートル以上の猛スピードで走るトレーラーも多く、接近すると恐怖すら感じる。
原油はバーリントン・ノーザン鉄道の貨物基地や最寄りのパイプライン、製油所に運んでいるとみられる。開発が急ピッチすぎて、パイプライン網はまだあまり整備されていないようだ。
さらに驚いたのは、道の両側にいくつもの油井が見えることだ。採掘リグや採油ポンプ、さらには原油に随伴して出る天然ガスを燃やしているフレア(炎)が容易に目に入る。車で1時間も走れば、10カ所以上見ることができる(右写真)。油井現場で最もよく目にするのが「サッカーロッド」と呼ばれる採油ポンプ。上下にゆっくりと往復運動を続けており、その油井がすでに生産段階に入っていることがわかる。
天然ガス価格は大幅低下、開発の波はオイルへ
米国でのシェール革命は天然ガスが先行した。ミッチェル・エナジー社がテキサス州バーネットでシェールガスの商業生産に成功したのが1998年。その後、開発業者の相次ぐ参入により、2008年には在来型と合わせたガス生産量が、70年代のピークを上回る規模まで急増する。
しかし、需給緩和によってガス価格は原油換算で2008年の1バレル=80ドルから、09年には20ドル前後まで暴落。採算の悪化した開発業者はいっせいにバッケンなどのシェールオイルへシフトした。ガスについては米国の自給率が9割に高まった結果、ほぼ国内需給のみで価格が決まるのに対し、原油は輸入比率が4割で国際市況の影響を受けやすい。米国の原油指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は、ドバイや北海原油に比べ15ドル以上割安とはいえ、今なお90ドル台と高水準。オイル生産ほうが、経済性ははるかに高いのだ。
同じシェール層でもバッケンのようなオイルリッチな地域と、バーネットなどドライなガス主体の地域がある。全米のリグ稼働数も2011年以降、オイルがガスを逆転。原油生産量は着実に伸びている。
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