シェール大増産で、失業率0%になった町 賃金うなぎ上り、モーテルまで満杯

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一方、ガスは生産量の高原状態が続き、価格も低迷したまま。シェールオイルと一緒にガスが随伴して生産されるためだ。技術革新で生産性も向上している。2009年末にバーネットで採掘権を取得した住友商事の米国子会社によると、ガス井を1本掘る日数はここ2~3年で60日から20日程度まで短縮されたという。

「これはブームでなく産業」「成功率は100%」

バッケンでは2008年からシェールオイルの生産が急増した。ウィリストン市経済開発局によると、現在、生産中の油井は7000本に達する。在来型油田で行う垂直掘削とは違い、シェール開発で行う水平掘削は地下で水平に何本も井戸を掘っていくため、掘削による地上へのダメージは小さいという。今後、年間2000本以上のペースで掘り進め、将来は5万本の油井ができると予想される。各油井では30~40年にわたって生産が続くという。

「これは一時的なブーム(boom)ではなく、産業(industry)なんです」――。

ウィリストン市経済開発局のディレクター、レイチェル・サウィッキ氏は現在のシェールオイル生産ラッシュについてそう表現する。「オフィスビルや住宅などのインフラ建設に膨大な投資が行われていることが、産業界の長期的なコミットメントを示している。加えて、バッケンの莫大な埋蔵量と“スリーフォークス層”の将来性、そして業界の技術的な進歩による油井運営の低コスト化は、外部要因に左右されにくい長期的な事業であることを示唆している」(サウィッキ氏)。

“スリーフォークス層”というのは、バッケン層の下に広がっている地層で、新たに発見されたシェールオイル層として期待されている。地域としてはほぼ重なっており、バッケンという場合にスリーフォークスを含む場合も多い。

昨年6月に米国エネルギー省が作成した2012年アニュアル・エネルギー・アウトルックによると、スリーフォークスを含むバッケンのシェールオイルの技術的採掘可能埋蔵量(TRR)は53億7200万バレルと推定されており、全米のシェールオイルのTRRである332億2600万バレルの16%を占める。ただ、業界関係者の間ではこの推定は過小評価との見方も多く、最大240億バレルとの推定もある。

バッケンにおける採掘成功率は今や100%といわれている。「技術的な進歩に加え、開発対象がシェール層であるということにより、採掘段階は劇的に圧縮された。かつては垂直に井戸を掘って原油のたまった場所を探していたので、空っぽの穴しか見つからないことも多かった。一方、シェール層というのは、端にリグを据え付けたテーブル板に似ている。シェール層を水平に掘っていくため、ハズレのほうが珍しい」とサウィッキ氏は説明する。

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