戦国武将たちも愛でた、茶道具の愉しみ方 庭のある美術館で、お茶の心にふれる

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噴火する富士山のような、ユニークさ

仁清のユニークな作品をもうひとつ。「銹絵富士山香炉」は、朝、昼、夕暮れの富士山を表現した3つがあり、これは昼の景を映したもの。中でお香を焚くと、背面に開けられた3つの穴から煙が出るようになっている。噴火する富士山ということだろうか。

「銹絵富士山香炉」野々村仁清作 江戸時代(17世紀) 畠山記念館蔵

今回のように、畠山記念館では年間を通じてお茶に関する展覧会が開かれている。開館は1964年。能登の畠山氏の後裔であり、荏原製作所を創業した畠山一清氏が、道具や能装束を保存・公開するために創設した。この場所はもともと、薩摩藩出身の寺島宗則伯爵の屋敷があったところで、昭和の初めに一清氏が3000坪の土地を購入。私邸「般若苑」を築き、その一角に記念館を造った。

窓から庭の緑が望め、自然の光が入る展示室には、茶室のような陰影ができる。日や時間によって作品の見え方が違ってくるそうだ。季節に逆らわず、日没の早い3月までは16時30分に閉館する。掛軸は、茶室で見るときと同じ目の高さで鑑賞できるようにと、畳敷きのスペースに展示されている。展示室内に茶室と茶庭があり、干菓子と抹茶をいただけるのもうれしい(400円)。

「お茶道具を見て、つくばいの水音を聞きながら、お菓子を食べ、お茶碗に触れ、お茶を飲む。五感でお茶の心に触れられる空間になっています」と水田さん。

ここで紹介した作品のほか、本阿弥光悦の「赤楽茶碗 銘李白」、小堀遠州の「共筒茶杓 銘一つ松」、酒井抱一の「乙御前図」、鈴木其一の「曲水宴図」、丸いお顔が愛らしい「次郎左衛門雛」などが展示されている。


冬季展「春を祝う -仁清・乾山・光琳-」

開催中~3月20日(水・祝)
 畠山記念館
 東京都港区白金台2-20-12 TEL 03-3447-5787
 10:00~16:30(入館は16:00まで)
 月曜休館
 一般500円


 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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