繰り返しになりますが、里親になるならないは生き方の問題です。すべての人に合った生き方とはいえません。他人の子ども、しかも親と離れて深く傷ついた経験を持つ子どもを自宅に預かるわけですからリスクも必ずあります。リスクを軽減するのが私たちの仕事ですが、それでもゼロにはなりません。
しかし、誰かが負ってくれなければ、そのリスクは子どもたちが一生をかけて払っていかねばなりません。貧困や犯罪などの形で社会に顕在化する場合もあるでしょう。
私たち自身の生い立ちを振り返ってみても、身近にいる大人の誰かが必ずリスクを負ってくれたのです。実の親だけでなく、親戚、学校の先生、先輩かもしれません。
かつては自分が大人にリスクを負ってもらった。愛情深く、辛抱強く育ててもらった。だから、今度は自分の番だ。そう感じる人からの問い合わせを私たちは待っています。
「よき大人」になるには
子どものいない筆者は、友人の子を前にしたとき、「大人としてどう振る舞えばいいのだろうか」と考え込み、戸惑うことが多かった。そのぎこちなさが子どもに伝わるのか、たいていの場合は懐いてもらえない。
しかし、渡邊さんは言う。大人が無意識のうちにやっていることは子どもにとっては当たり前ではないのだ、と。自分が子どもだった頃、大人にしてもらってうれしかったことは何なのか。風邪で寝込んでいたとき、家事全般が苦手な父親が一生懸命にむいてくれたりんごの味をなぜか思い出す。両親や親戚が仲良さそうにおしゃべりしている様子を見るのも好きだった。面と向かって真剣にしかってくれた学校の先生の顔も覚えている。
完璧な大人を演じる必要はない。当たり前のことを少し意識的に行うだけで、子どもにとってポジティブな存在になりうるのだ。実の親や里親になるかどうかは個人の選択だが、ほんの少しの心掛けで「よき大人」にはなれるかもしれない。
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