家庭養護が必要な子と里親の知られざる現実 児童養護施設などで暮らす子が4万6000人

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特に障害を持った子どもは家庭養護が難しいとされています。しかし、難しければそれなりの予算を付けて解決するべきでしょう。

語弊を恐れずに言いますが、子どもたちを愛情深く育てたら、5年後10年後には立派な社会人になり、納税者にもなってくれる可能性が高まります。つまり、里親制度にちゃんとした予算を付けることは日本社会の将来への投資なのです。

――なるほど。子ども好きで気持ちにゆとりのある晩婚さんは里親に向いている気がしてきました。

当然のことですが、私たちは「誰もが養育里親になるべきだ」などとは考えていません。価値観は多様であり、いろんな人がいていいのだと思っています。「全員右にならえ」の社会では子どもたちも育ちにくいですからね。

私たちに問い合わせをいただき、研修を受けられた方の中でも、実際に里親になるのは数%に過ぎません。しかし、残りの9割以上の方々は「脱落」したわけではないのです。里親になるという生き方を選ばなかっただけで、「うちはやっぱり養子縁組をしたい」といった気づきを得る方もいます。

だから、「晩婚さんいらっしゃい!」読者の全員が里親になるのは多すぎます。子どもの数は全国で4万6000人なので里親が余ってしまいますよ(笑)。でも、読者のうち1000人に1人でも興味を持ってくれるとうれしいですね。

里親になるには体力も必要です。子どもたちが何かアクションしたときに、ぐっと我慢して冷静に対処するためには、こちらが元気でなければなりません。現状では50代60代の里親がほとんどですが、30代40代の若い方々が関心を持ってくれるのは大歓迎です。

大人社会へ飛び立つ瞬間

――晩婚さんの中には不妊で悩む夫婦も少なくありません。実子や養子ではなくても「親としての喜び」は得られるものなのでしょうか。

里親の目的は「親」になることではありません。「預かった子どもの将来にポジティブな変化をもたらす存在になること」です。適切な家庭養護をすれば、どの子どもにも必ずその変化の瞬間が訪れる。それは私たちが保証します。

子どもを預かるのは確かに大変です。特に、思春期を迎えた子どもは難しい。でも、もしも彼らを引き受けてくれる方がいるならば、私はこう言いたい。彼らが大人社会へ飛び立つ瞬間をS席で見る臨場感は何物にも代えがたいですよ、と。

子どもを育てたことは自分の人生にすごくプラスになります。私自身も実際に里親をやってみるまでは気づきませんでした。子どもたちの飛び立つ力に励まされるんですね。もちろん、リアルな社会貢献をしているという実感もあります。

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