「本当に営業が強い会社」は意外とムダがある ただし「カッコいい」にとらわれてはいけない

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石川:リクルートでは、最初に切り拓く営業マンがいて、ユニークな営業行動をして売れたことがわかると、いったんは褒められるのですが、それだけでは本当に褒められない。みんなができるように仕組み化することが求められるし、新卒でもバイトでもできるような方法論にしていく。それがまさに仕組み営業ですよね。これがリクルートの営業の強さでした。

常見:カリスマがいて、武勇伝があるのは良いことですが、再現性がないとダメです。たとえば株式を上場するような会社は安定した業績を出さないといけないから、カリスマに依存してはいけません。だからある程度の仕組み化は必要になってくるでしょう。

石川:効率化を極限まで進めていくのは、成果も見えますし、自信が持てます。でも、人間で例えると、ダイエットをして体脂肪率が6%の状態です。それだと風邪をひいてしまう。やっぱりどこか脂肪がないといけない。痩せるのは簡単なんですが、実は気持ちよく太ることの方が難しいと思っています。

北澤:ムダに見えるところが、意外と企業の強さになっていたりする。リクルートも最近は、そのことに気づきつつあると思います。

「かっこいい」だけのために働いてもダメ

石川:ちょっとおかしなことをやっている営業マン――お客さんと雑談ばっかりしているような――に対するあこがれがまだある会社は、希望があると思っています。

常見:なるほど、「誰がかっこいいのか」は、会社の空気を大きく左右しますよね。

北澤:とはいえ、会社の「かっこいい」だけのために働いてもダメですよね。たとえば、リクルートの場合は、お客さんが何人採用できるのか、その効果を返さないといけません。

「ソリューションか? 効率か?」と売り方や成果だけに走って、お客さんに結果を出すことを怠ると、強さがなくなっていきます。そこに徹底的にこだわって一生懸命にやれる会社は、自然と営業力のある会社になっていくと思っています。

営業をめぐって熱く語り合った前編をお届けした。これもまた、時代によって変化するものではある。しかも、単純に一方向に進むのではなく、振り子のように揺れて進むものなのだ。営業マン諸君、ヒントになる部分はあっただろうか。次回は「仕事で成長する」をテーマにお届けする。目からウロコが落ちる人材育成ノウハウが多数登場。お楽しみに!

(写真・構成:山本 ぽてと)

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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