「本当に営業が強い会社」は意外とムダがある ただし「カッコいい」にとらわれてはいけない

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常見:「今どきの若者の営業はダメだぞ」というマウンティングは絶対にしてはいけませんよね。若い創意工夫から、ドラスティックな考えが出てきていると思います。最近、この若手営業がすごい! という人はいましたか?

北澤:スプロケットの深田浩嗣さんですね。彼は理系出身なのですが、先鋭技術をつかいながら、営業をしています。理系で企業をするにも、最初は「お願いします」といえる営業力がないと、大きくなれないと、彼は知っているんですね。

常見:私は営業力の強い会社を2社挙げたいと思います。まず野村證券です。野村證券の営業マンは、入社1年目で「100件のお客様の開拓と10億円の資産導入」という目標がふられます。その荒行を達成する中で、新たなイノベーションが生まれるというストロングスタイルです。

石川:「ボトムアップが強い会社はどこか」という話になったとき、野村證券の名前が挙がったことがあるんです。上の人がいうことは絶対だという軍隊のようなイメージがありますが、「自分で考えて、自分で動く」ことが野村證券では求められているようです。そうでないと、この荒行のような成果は出せないでしょうね。

「プラスアルファの工夫が求められています」(石川明氏)

常見:ここ20年で、「営業戦略が大事だ」とか「仕組み営業を」ということが言われてきましたが、ボトムアップ営業を否定してはいけません。ちなみに、20年前、私がリクルートに内定した時に、講義でお世話になっていた『ストーリーとしての競争戦略』を書いた楠木建先生に「君の行く企業は、まるで、ドライバーが目隠ししていて、後輪駆動で突っ走るBMWみたいだな」と言われたことがあります。トップレス企業かと(笑)。トップには、「1兆円の借金返済」くらいしか実は目標がなくて、目隠ししているのだけど、現場が強烈な後輪駆動で爆発的にやっていると。

北澤:それは、よくいったものですね(笑)。

常見:もう1社は富士ゼロックスです。ここは昭和的な熱い営業と、平成的ソリューション営業が合体しています。営業は「この担当業界、担当エリアで初めての事例をつくる」ことに燃えているんです。営業だけではなく、エンジニアも含めて、この案件をどうにかしようとする、と。

余談ですが、リクルート時代に、上司が教えてくれたことがあります。「富士ゼロックスの営業から聞いて、俺が真似していることがある。雨の日はお客さんのところに入る前にわざと雨をあびてから取引先にいく」と。そうすると、必死さが伝わるとのことでした(笑)。別に組織的にやっていたことではないでしょうけど(笑)。

ソリューション営業は儲かる?

先ほど石川さんが「日東電工は本物のソリューション営業」とおっしゃっていましたよね。みなさん、耳にタコができるくらい「ソリューション営業」という言葉を聞いたことがあると思います。私も営業をしてきたとき、「そもそも、そのお客さんは何に困っているの?」とよく先輩から言われました。そんなソリューション営業で、イノベーションを起こすことはできるのでしょうか?

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