ガラパゴス生まれの〝クールジャパン〟 AKB48も典型的ハイコンテクスト風土の産物

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ハイコンテクストな単一民族社会、
ローコンテクストな他民族社会

ハイコンテクストとは、アメリカの文化人類学者、エドワード・T・ホールが提唱した概念で、社会の中で慣習、言語など文化の共有度が高い状態を指します。日本のような単一民族社会は、このハイコンテクストな状態を維持しやすいわけですね。

対照的に、文化の共有度が低い状態をローコンテクストと呼び、アメリカのような多民族国家はその代表的な例となります。

「皆まで言うな、目を見りゃわかる」。ハイコンテクストな社会のコンテンツは、観客が皆同じような文化風土を持つために、細かいニュアンスも共感してもらいやすい。

AKB48などはまさにそうした風土の典型的な産物であり、あれは見た目がかわいいだけではない。普通の少女が研究生から出発しスターになるまで、その道程をファンが共有し、応援していくからこそ楽しいものなのです。逆にいうと、その文脈を共有していないと、「真のAKB道」は極めることができません。

一方、ローコンテクストな社会では、さまざまな背景を持つお客さんに一発で受容してもらう必要がある。わかりやすく刺激的で、インパクトのあることが重要となります。

K-POPなどは最初から国を越えることが意図されているだけにローコンテクスト的で、見た目も刺激的。たとえば少女時代は「美脚グループ」としてビジュアル面からも記憶しやすいようにプロデュースされていました。

AKB48の場合は、「会いに行けるアイドル」がキャッチフレーズでしたが、交際が発覚すると丸坊主になるなど日本人でも時には退いてしまうそのたたずまいがどこまで国を越えて伝わるか、なかなか難しいところだと思います。

興味を持ってくれた人に、のぞき込んでもらうには強い。しかし国境を越えて、攻め込んでいくのは苦手。

「日本のコンテンツを海外に」とはよく聞く話ですが、こうした特性を理解したうえで考えないと、うまくいかないことでしょう。

もちろんこれは、どちらが優れているという話ではありません。たとえばローコンテクスト社会の権化、アメリカのハリウッド映画は、確かに最強のグローバルコンテンツといえます。しかしその一方で、海外での配給収入を期待するあまりローコンテクスト化が進行しすぎて、「見た目はすごいが、何の印象も残らない」という反省も出てきている。

宮崎駿監督が以前、いたずらに海外を志向するのではなく、まずドメスティックを追求すれば、結局海外にもつながると発言していましたが、さすがに深い知恵だと思います。

 

 

撮影:今井康一

初出:2013.2.16「週刊東洋経済(シェール革命で日本は激変する)」

 

(担当者通信欄)

ハイコンテクストとローコンテクスト、どちらを好むかは現在の自分にどのくらい、そのために使える(使いたい)時間があるかどうかにも依存するのかもしれません(とAiR3の堀田先生×本郷先生対談で読んだときに思ったような気がします)。学生の頃に比べると、日々バタバタとするからか、事前準備なしに楽しめるローコンテクストが優勢でハイコンテクスト的なものに費やせる時間が減ってしまったような気がするこの頃です。。

さて、堀田純司先生の「夜明けの自宅警備日誌」の最新の記事は2013年2月18日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、投資の新常識)」で読めます!
【永遠に終わらない昭和の響き】
芸能マスコミの伝統、姓と名の頭から取った愛称の使用について、「いつまでキムタクと呼ぶのか問題」を取り上げます。実は日本人の中の昭和は終わっていないのではないか?

 

堀田先生の近刊紹介。中年の青春小説『オッサンフォー』(講談社、2012年)。詐欺師四人組が大阪を舞台に繰り広げる事件も、ぜひ本コラムとごいっしょに♪

 

大好評、堀田先生主宰の電子雑誌「AiR3」(2012年リリース)。漫画家、作家、研究者、ジャーナリスト…豪華執筆陣にも大注目です!  

 

冒頭にヘーゲルとありますが、実は哲学ってライトノベルで入門できます。たとえば、金髪はの子がデカルト。『僕とツンデレとハイデガー』(講談社、2011年)

 

堀田 純司 作家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほった じゅんじ / Junji Hotta

1969年3月8日、大阪府大阪市生まれ。桃山学院高等学校を中退後、大検を経て、上智大学文学部ドイツ文学科卒業。漫画誌編集者などを経て自身の著作を発表するようになる。文芸、科学、社会問題、メディア、ポップカルチャー等々、幅広く関心を持つ。著書に“中年の青春小説”『オッサンフォー』(講談社、2012年)、『僕とツンデレとハイデガー』(講談社、2011年)、『人とロボットの秘密』(講談社、2008年)などがある。編集者としても『生協の白石さん』(講談社、2005年)などのヒット作を手がけている。2010年には各分野の書き手とともに「作家が自分たちで作る日本で初めての電子雑誌」『AiR(エア)』を刊行し注目を集めた。続く『AiR2(エアツー)』(2011年)、『AiR3(エアスリー)』(2012年)も好調に刊行。
⇒【Twitter(@h_taj)

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事