"オタク"部長、「カイゼンの達人」に化ける キヤノン電子社長 酒巻久氏に聞く(上)

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自分が持っていない能力を重視

酒巻 久(さかまき・ひさし)
キヤノン電子代表取締役社長
1940年栃木県生まれ。芝浦工業大学工学部卒。67年、キヤノン入社。複写機開発、総合企画等の研究開発部門を経た後、常務取締役生産本部長を務める。99年より現職。

組織づくりにおいて私が重視したのは、自分が持っていない能力を持っている部下でした。

私はどちらかというと新しいアイデアがひらめくタイプです。感覚的に物事を考えるから、受験勉強みたいなのは不得意(笑)。

そこで、組織の目標に合わせて、自分にない能力を持っている部下に得意分野の勉強をさせ、私もその部下と一緒になって勉強をしました。

 私は部下が勉強することの意義を自分で見つけ出すまで、考え方をうるさく言います。しかし、私は部下がやったこと、挑戦して失敗したことに対して怒ったことはありません。足りない部分を勉強してもらう際に、間違った方向に行かれたら困ってしまうので、その部分では怒るのです。

その後、5人、10人、50人と部下の数は増えていきましたが、基本的な方法論は同じです。あるプロジェクトが立ち上がったら、それに必要な能力を持った部下をできるかぎり集め、それらの部下の強みを生かすことによって、目標を達成することができるのです。

人間性の中で重要な「やさしさ」には2種類あると言う酒巻氏。そのやさしさを勘違いしてしまうと、適切な人材育成や組織運営はできないという。そして、アイデアを出す「異能」な人材を含めて、多様な人材をそれぞれが生きるタイミングで登用することの重要性を説く。

部下を見る際に重視しているのは人間性、特に「やさしさ」を持っているかどうかです。私は周囲から厳しい人間だと思われていましたから、こう言うと意外に思われることもあります。しかし、部下に厳しい人の方が本当はやさしいのです。

やさしい人には2種類あります。1つは「自分」を気遣う人。もう1つは「相手」を気遣う人です。自分を気遣う人がやさしいと思われがちですが、そうではありません。

「こんなことを言ったら部下に嫌われてしまうのではないか」と自分を気遣う人は、部下に厳しいことを言いません。こういう人は周囲の評価が高いことが多いのですが、このタイプを管理職で上に上げていくと組織がガタガタになってしまう。いつも自分のことを気遣うから、組織や会社のことが二の次になってしまうからです。

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