"オタク"部長、「カイゼンの達人」に化ける キヤノン電子社長 酒巻久氏に聞く(上)

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厳しさは、その部下を何とか伸ばして自分を超えてもらおうとすることの裏返しです。何も言わなくて部下が育つなら、その上司がいる必要がありません。やさしさと厳しさは、表裏一体です。

だから、「相手に対する気遣いができること」がマネジメントには必要不可欠なのです。

自分の考え方を表現できるか

部下を見る際にもうひとつ大切なのは、自分の考え方を的確に表現できるかどうかです。どんなにいい学校を出ていても、自分の考えをきちんと言えないようでは困ります。

「あれはダメだ」と批判的、評論的なだけで、自分の考えはどうなのか聞いても何も言うことができない人もいます。

もちろん、人間関係も上手につくれなくてはいけません。何か困っているときに周りに人が集まってきて助けてくれるような人は、必ず成功します。どんなに優秀な人でも、1人で何でもやろうとしていたら、いつか行き詰まってある程度のところで成長が止まってしまいます。

最終的には、実直で人が寄ってくるような部下が出世していたように思います。物事は1人でできることは限られています。通常は共同作業で、研究開発の場合だと100人くらい集まります。

「あの人だったら助けてあげたい」という気持ちを抱かせてくれるような人間でないと、上に立つことはできないのです。

異能な人材の活用法

開発などでアイデアを出す人間には、ある種の異能が必要です。異能というのは持って生まれた才能なので、上司としてはそれを開花させないといけません。

しかし、こういう人材は生意気なやつが多いんですね。怒るとやる気をなくしてしまうので、できるかぎり自由にやらせて怒ってはいけません。おだてて育てないとダメなのです。

私の場合、組織の目標を決めると、まず最初にこのような異能な人材を入れます。そこで、いろいろなアイデアを出させるのです。しかし、そのような人材は持続するのが苦手で飽きっぽいところがあるので、そのままずっとやらせてしまうと組織がぐちゃぐちゃになってしまいます。

そこで、しばらく経った後に、ちょっと異能に近いけれど持続力のある人間を入れます。そして、もう少しで完成するというくらいのタイミングで、アイデアはそんなに出せないかもしれないけれど、きちんと持続できる人間を入れるのです。

人にはそれぞれ得意分野があります。このように3段階の人材をそれぞれが生きるようなタイミングで入れることで、組織はうまく回るのです。

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