「白川総裁は誠実だったが、国民を苦しめた」 浜田宏一 イェール大学名誉教授独占インタビュー

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日銀総裁は、国会に呼ばれて参考人として説明することがあっても、公式な評価を受けることがない。そういう意味では、金融政策を評価するプロセスも不可欠だ。ただ、今後の1世紀を考えたとき、政府がおカネを刷って(日銀を)安易に使いたいと思うことがあるかもしれない。旧日銀法にあった総裁の罷免権まで財務大臣(当時は大蔵大臣)に与えるというのは極端で、そこまでやる必要はない。目標が達成できないときに、日銀が説明責任を負うことは最低限必要だ。

――日銀はマネタリーベース(流通現金+民間金融機関の日銀当座預金)のGDP比が他国よりも高く、金融緩和を進めていると強調しています。

日本は現金社会なので、ベースマネーの比率がいつでも多いのは当たり前。草食民族と肉食民族を、同じモノサシで図るのが日銀。経済学がわからないのか、国民をだますために言っているのかわからないが、対GDP比での議論はまったく意味がない。そもそも、為替には貨幣量の変化が効く。リーマンショック後、日本が金融緩和で十分な量のおカネを出さず、米国は量を出したので、円が高くなった。

――白川方明総裁は、欧米でもマネーの「量」に着目した議論はほとんど行われていない、と昨年11月の会見で話しています。

リーマン危機以降、マネタリーベースの伸び率を比較して分析したわれわれの研究は外国で認知されないというのだろうか? 私の教育(東京大学経済学部で白川氏は浜田氏の教え子)が悪かったのかもしれないが、経済学は事実を見ないといけない。

日銀は自分たちに責任がないようにするために理屈をこねる。詭弁法律家的な論理だ。今の状況で量に着目した議論がない、というのは世界の笑いものだと思う。

「イージーマネー」と「タイトバジェット」がカギ握る

――金融緩和の一方で、自民党は大型の財政出動をしています。

私の理解では、今は短期に日本経済のギアを入れ替えるときだから、大型の補正予算を組んだのだろう。しかし、景気対策として財政政策はあまり効かないということが国際金融の基本定理だ。財政で有効需要を喚起する力は、変動為替相場の下では弱くなる。

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