なぜ僕はMITを目指したか 就職活動から夢追い活動へ

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吐き捨てた小石

そんな倦怠の最中に、僕はその人と出会った。彼は東大の同じ研究室の卒業生で、学部卒業後にMITの航空宇宙工学科に留学して修士を取り、当時は博士課程にいた。休暇で日本に帰省中に研究発表をするために東大に帰ってきていたのだった。

彼の研究内容は当時の僕には難しくてよく理解できなかったが、彼が僕よりもずっと大きな世界で、ずっと自由に知的好奇心を追求して生きていることはよくわかった。彼が進んでいる道のほうが、自分が進もうとしている道よりも、過去に自分が憧れた生き方にずっと近いように思えた。それにもかかわらず、彼はたった数年前まで僕と同じ大学の、同じ学部の、同じ研究室にいた普通の学生だったのだ。

「彼にできるなら、僕にだってできるはずだ」。そう思ったとき、消えかけていた情熱に再び火が灯ったのを、僕は確かに感じた。

彼は研究発表が終わった後、先生や研究室のメンバーと夕食に行くというので、僕も一緒について行ってちゃっかりと彼の隣の席に座った。そして僕は彼を質問攻めにした。どうやったらMITに入れるのか。どうやったら奨学資金を取れるのか。どうやったら英語がうまくなるのか。

彼から返ってくる答えの1つひとつに、僕は目から鱗が1枚、1枚と剥がれ落ちた。空一面を覆っていた暗雲が割れ、光がぱっと差し込んだ感覚だった。そしてその光の下に照らされていたのは、友達と一緒に惰性で歩いてきた大通りとは違う、今までは見えていなかった細い道の入り口だった。その道の標識にはこう書いてあった。

「MITへ行って、アメリカで宇宙開発をする」

僕は、のみ込みかけていた小石をペッと吐き捨てて、その細い道を無心に駆け出したのだった。

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