田原:チャレンジする人間は日本では偉くなれないんだね。僕も若い時に、いろいろな企業を取材したけど、大きな仕事を成し遂げた人は、せいぜい常務まで。無難な仕事をしてきた人が社長になる。
木本:アメリカはそうじゃないんですね。
田原:アメリカでは社長は社長として、実績を上げて他社に移っていく。日本は一般的にですが、社長になるのは非難や批判をされない人間。だから攻めの経営でなく、守りの経営になる。とくに高度成長以降、守るべきものができてしまったから、その傾向が強くなってしまって、1991年以降「失われた20年」になってしまった。これが大きな問題。
木本:挑戦するという感覚をしっかり持っている人が世界でチャレンジし始めて、日本に残るのは先進的発想を持てない人ばかり。となると日本は衰退してしまって、世界の企業とはどんどん差ができてしまう。
田原:もう、そうなってしまっている。
木本:ええっ! なんとかしないといけないじゃないですか。
シャープや東芝の失敗の原因は?
田原:それができないんだね。たとえばなんでシャープが台湾の企業に買収されるのか。経営力がなかった。なんで東芝が社長3代に渡って粉飾決算をやったのか。要するに改革ができなかった。粉飾をやりながら、役員の中で「ノー」と言う声がまったく上がらなかった。「やめたほうがいい」といえる人がいないんだね。山本七平という評論家が、かつて「日本は空気の国」だといいました。空気を乱すのがいちばんよくないと。空気を乱さない人間が偉くなる。「そうだそうだ」という人間が重用されて、「違う」という人間は追いやられる。
木本:知り合いの30歳ぐらいの若者も海外で会社作っていたりして、頑張っている人もいます。頭いいし、学生時代からいろいろな事に敏感でした。となると、そういう人間とそうでない人間とはどう違うんでしょう?
格差社会といわれ、どんどん格差でてきてますが、日本をそういう方向に進むんでしょうか?
田原:自由競争であれば、格差が出てくるのは当然です。それでも日本は世界をみれば、まだまだ格差がない社会。アメリカなんてもっと格差ある。だから、ドナルド・トランプみたいな人が出てくる。イギリスも同様。なんでEUから離脱になったか。格差が大きくて現状に不満があるからです。現状を変えることに賛成したわけです。トランプは、全部鎖国しよう、メキシコからの移民を防ぐためのさくを作ろうといって支持される。現状に不満を持っている人の声が大きくなっている。
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