両親は難民…貧しさからはい上がる同級生
アメリカのビジネススクールは、授業料・生活費も入れると2年間で2000万円近い費用がかかる。学生のほとんどが「お金持ちの子女」というのが現実だ。
筆者自身も、コロンビアビジネススクールに通っていたとき、あまりのお金持ちの多さに驚いたことがある。「いや~、教育ローンが大変だよ」と言っている人でも、両親は富豪や王族だったりする。親の方針で、庶民の生活を体験しているだけなのだ。
ところが、その中でも少数だが、貧しさからはい上がり、奨学金などを利用してビジネススクールに通っている人たちがいる。
西川さんの親友、パニー・ドンさん(28)もその一人。同じクラスで、一緒に学内コンペに参加したことから仲良くなった。
パニーさんの母親はカンボジアからの難民、父親はベトナムからの難民だ。インドシナ難民は1970年代、ベトナム、ラオス、カンボジアの3国が社会主義体制に移行したことに端を発する。パニーさんの両親も、新政府からの迫害から逃れるため、1980年代前半にアメリカに移住してきた。
テキサスで出会い、結婚。5人の子どもをもうけた。パニーさんは長女だ。両親は、現在も工場の工員。父親は乳製品の工場で、母親は電子機器の工場で働いている。
「パニーと話をしていると、『世界史』をリアルに感じられます。難民問題なんて、日本にいるときは、自分とは関係のない世界の話だと思っていました。でも実際、パニーから、ベトナムやカンボジアから命からがら脱出してきた両親の話を聞くと、アジアの歴史を肌で感じることができます」
ボストンで生まれ育ったパニーさんは、高校まで公立の学校に通った。家が貧しかったため、高校からずっとアルバイトをして、学校の教材などの費用を賄った。成績優秀だったため、奨学金で名門タフツ大学に進学した。
大学卒業後は、コンサルティング会社で働きながら、ビジネススクールへの進学を目指した。MBA取得の費用も、貯金と国の教育ローンで、何とか捻出できたという。
「パニーとこんなに親しくなったのは、境遇が似ていたからかもしれません、私も、家がそんなに豊かではなかったので、高校まで公立で、大学時代は生活費をアルバイトで賄っていました。
家庭教師から、お弁当屋さんの店員まで、何でもやりましたね。留学費用は奨学金とミシガン大からのローンです。大学のローンがなければ、留学できなかったので、ミシガン大にはとても感謝しています」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら